本市から車で30分ほどの距離にある西原村。付近ではあちこちで道路が陥没して穴が開いたり、建物が倒壊して瓦礫が道を塞いだりしていた。

 西原村小森の町本商店(地震当時は閉店)は、1階部分がつぶれて、連結する奥の1階建ての住居部分もつぶれていた。一人で住居部分に住んでいた町本千夜子さん(77)は、中に閉じ込められたという。

「目が覚めたら真っ暗で、家の中が崩れていた。目の前をさわってみたら、すぐ上に天井があった。ソファと家具の間にいたことで、たまたま助かった。携帯電話が手元にあったから、向かいの床屋の男性に『つぶされとうよ~』と電話して助けを求めた」

 助けに呼ばれた理髪店店主・大塚昇さん(60)がこう証言する。

「近所の男性3人くらいを呼び集めて、バールで瓦礫をはいで、おばあちゃんを助け出した」

 町本さんが靴を取りに行きたいと家の中に入ろうとすると、また緊急地震速報が鳴り、「危ない」と慌てて、引き揚げさせていた。

 熊本市内の病院はどこもケガ人で溢れていた。南区の済生会熊本病院の看護師は16日午後、こう話した。

「頭を打って重症、意識がないなど緊急措置の必要な人はたくさんいる。ロビーの椅子を取り払い、ベッドや点滴などをしつらえ、戦場のようです。トリアージ(治療の優先順位付け)で、骨折程度は待ってもらわないとダメでロビーには血を滴らせながら歩く人もいた。余震の中でヒヤヒヤしながら治療してます」

 14日の地震で倒壊した自宅の下敷きになって亡くなったのは、荒牧不二人さん(84)だ。益城町にある自宅の木造家屋の1階部分がつぶれ、瓦屋根の下に埋もれ、死亡した。近くに住む50代の女性が語る。

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