「いったん元気になってもうつ病を繰り返す場合や、抗うつ薬が効かなかった場合は、双極性障害を疑う必要があります」(渡邊医師)

 このように、治らないうつ病の診断を再検討するには、うつ症状以外の症状を把握し、その治療にあたらなければならない。

「同じうつ病でも、さまざまなタイプのものがあります。治らない場合、その患者さんがどのようなタイプのうつ病なのかを分析しなければいけません。また、他の障害を伴っていないか、からだや脳に異常はないか、もともとどんな性格なのかを多面的に診ます」(同)

 杏林大学病院では、1週間の入院検査プログラムがあり、4~5時間に及ぶ面談や心理テスト、身体検査、作業療法などを通して、うつ病の原因、また素因となっている患者の気質について徹底的に調べる。検査の結果、発達障害や脳の病気などの別の病気だとわかるケースもある。

 難治性のうつ病患者は、不安症やパーソナリティー障害を併発している確率が高い。不安症は、パニック症や人前に立つと極度にドキドキするという社交不安症など。パーソナリティー障害は、ストレスから逃げる傾向や、物事を気にしすぎてしまう傾向が強いなど、性格の偏りによって社会生活にうまく適応できない精神疾患だ。

 こうしたうつ以外の症状は、抗うつ薬以外の薬物療法や認知行動療法をおこなうが、最も重要なのは患者に丁寧に説明することだと渡邊医師は話す。

「患者さんにとって、なぜ治らないのかわからないことが一番のストレスになっています。そのせいで自信がもてなくなったり、疲れてしまったりと、結果的にうつ病を悪化させています。『もともと物事を気にしやすい傾向があるから疲れる』という原因を伝えて安心してもらうことが何よりも大切です」

週刊朝日  2016年4月15日号より抜粋