林:二階堂さん、谷崎潤一郎の『痴人の愛』のヒロイン、ナオミ役なんかどうですか。すごく似合うと思いますよ。

二階堂:ナオミ、やりたいんですよォー。私、ナオミと同じ誕生日なんです。今回の赤子と同じくらい、やりたい役なんです。

林:そのうちオファーがありそうですよ。二階堂さんはどちらかというと、純文学っぽい映画への出演が多いですよね。

二階堂:そうですね。私は12歳でこのお仕事を始めて、13歳で映画デビューしたんですが、オーディション会場に行くとかわいい女の子があり得ないぐらいいっぱいいたんです。それで「自分には何もない。とにかくしっかり土台をつくらなきゃ」と思って、役であれ作品であれ、こだわるところはこだわってやってきたんです。

林:そうだったんですね。

二階堂:10代のときは、「生か死か」みたいな、人間の根源的な問題を突きつけられるような作品が多くて、等身大の普通の女の子役ってほとんどやってこなかったんです。でも20代を迎えて、自分の中で一つ土台がつくれたという実感があって、これまでとは違う役柄にもどんどんチャレンジをしていこうと思いました。昨年末に「オオカミ少女と黒王子」という、少女漫画が原作の映画を撮ったんですが、恋をして、悩んで、泣いて、絶望するみたいな普通の女子高生役が、すごく楽しかったんです。

週刊朝日 2016年4月8日号より抜粋