あわてて拾おうとする姿を乗客が携帯で写真を撮りながら、嘲笑するんですよ。

 近所のおばあちゃん(八千草薫)の家で、みんなで楽しく芋煮会をしていたら、いきなり「社内で不倫してたんですよね?」なんて、言い出す男(坂口健太郎)がいるんですよ。実際不倫してた女の子(高畑充希)に「不倫してたよね」って聞くとか、そんなベッキーの前で文春朗読するような行為、やめてさし上げろ。

 なんとかその場をとりつくろって、「さ、食べよう」って有村が笑顔で言うと、噛みつく女(森川葵)がいるんですよ。「みんな全然楽しくねぇべ。楽しいっておかしぐね!」。わざわざ訛りながら噛みつくんですよ。

 このいたたまれなさのドミノ倒し。せっかく芋煮を楽しみにしていた八千草さんが不憫すぎて、いつかこの芋煮会を思い出してきっと泣いてしまう。

 思えば「ふぞろいの林檎たち」では、どんな気まずい場面でも、そこに桑田佳祐の「エエエエリィィィ!」(「いとしのエリー」)って歌声が重なることで、視聴者もホッとひと区切りついたのだ。このドラマに足りないのは、「エリー」のひと声。今からでも、いたたまれない場面には「エリー」をつけてほしい。

週刊朝日 2016年3月4日号