くさか:実話を基に漫画にされているんですってね。映画「ペコロスの母に会いに行く」で一番笑ったのが、オレオレ詐欺の電話のシーン。「母ちゃん俺、俺。金振り込んでくれ!」って犯人が言って、「ああ、わかった」と受話器を置いた瞬間にすぐ忘れるという(笑)。

岡野:そうそう、近いことが実際にありました。僕の漫画は私小説みたいなものですが、くさかさんは、たくさん取材して描かれているんですよね。知識がいっぱいあるから、万が一、介護が必要になっても心構えや対応はばっちりですね。

くさか:はい、この漫画のお陰ですね。「ヘルプマン」に取り組んでいなかったら、介護する立場になったときに自己流でやって行き詰まっていたと思います。でも今は、認知症になったとしても何も変わらないよっていうのが本当によくわかるし、誰かがなっても「大丈夫や! わからないようになんてならないから」って言えます。初動で困ることもないですね。介護や認知症の情報はすごく重要だと思いました。

岡野:「ヘルプマン」が予習になっている感じですね。

くさか:読者の方からもそういうお話を聞きます。もっと早く知りたかったという声も。私も漫画を描く前は、自分がぼけたら嫌だな、エロばばあになったらどうしよう、とかものすごく不安に思っていましたが、今は「まあいいや」って。

岡野:それ同感です。どんげんでんなる! 僕なんて、この間ストーブって言葉が出てこなくて、「ぬくもる、燃える、あったまる……」と単語をあげて説明して。息子にその話をしたら、「まあ、漫画は描かんけど、面倒はみるから」って。描いてほしいなぁ、「ペコロスに会いに行く」というタイトルで。

週刊朝日 2016年2月26日号より抜粋