「恭子、マリー・アントワネットの生まれ変わりだと思うんです」

 極東の小娘のたわ言にも、老婦人は鷹揚に問い返す。「なんでそう思われるの?」。すると深キョンは「だって恭子も、パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃないって思うから」。

 偉いよフランス貴族。平民だったら、吉本新喜劇ばりに全員で床にダイブしてるはず。これ以来、常に深キョンの後ろにお花畑を幻視できるようになった。

 このドラマでも、ひまわりの着ぐるみを着こんだり、大きな生肉のぬいぐるみを抱きしめたり、やたらと深キョンの周囲にフカフカしたものを置きがち。話の内容なんてどうでもいい、とにかく深キョンのフカフカでフワフワっぷりを見てくれ!という潔さを感じる。

 かたや、どSという設定のディーン・フジオカなんだけど、「あーっ?」という威嚇気味なリアクションが、すでに篠原涼子が髪をかき上げる回数に匹敵。それでも、まったくどSに見えないのは、前髪のせいか、眼鏡のせいか、演技力のせいか。「あさが来た」の五代ファンタジーはいずこへ? そうだ、きっと足りないのはあのBGM。ディーン登場シーンは、すべて「あさが来た」で流れるエレキギターBGMでお願いしたい。

週刊朝日 2016年2月5日号