さらに時間をさかのぼり、70年代はじめぐらいまでは、竹下通りはごく普通の商店街だったという。

「魚屋、八百屋、たばこ屋にケーキ屋。決して人通りの多い商店街ではなかったですね」

 裏手には小川も流れていた。新井副会長は言う。

「竹下通りの裏路地のような『ブラームスの小径』。あそこは川だったんです。明治神宮から流れてきてたんですね」

 タレントショップブームは、それほど長く続かず、“満員電車”は、一気にガラガラになった。

「シャッターだらけになって。竹下はこのままダメになっていくかもしれないと思いました」(遅澤会長)

 しかし、安くてカワイイ「プチプラ(プチプライス)」系の洋服や雑貨を扱うショップが次々出店し、中高生女子が殺到した。

「それがなかったら、今の姿はなかったかもしれませんね」

 満員電車は、また走り始めた。

(太田サトル)

週刊朝日  2016年2月5日号