年末の紅白歌合戦では総合司会を務めることが決まった黒柳徹子さん。「テレビの歴史」ともいえるエピソードを、作家・林真理子さんとの対談で語った。
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林:渥美清さんとも親しくされていて、「兄ちゃん」と呼んでいらした。渥美さんは黒柳さんのこと、「お嬢さん」と呼んでらしたんですね。黒柳さんのこと好きだったんじゃないかって、黒柳さんの著書『トットひとり』を読んで感じましたよ。
黒柳:ふふ、どうもありがとう。山田洋次監督もよくそうおっしゃっていて、冗談に「最後のマドンナは黒柳徹子さんだ」って。
林:見たかったですよ、それ。
黒柳:私は鈍感で、渥美さんが病気だってぜんぜん気づかなかったの。当時、渥美さんと連絡を取るときには渥美さんが一人で住んでいたアパートの留守電にメッセージを残していたのね。あるとき、一緒にごはんを食べようと何度も電話したのに連絡が取れなくて、2カ月後にようやく連絡があって会ったの。「2カ月も返事がないって変じゃない。私に黙って女連れて温泉に行ったんでしょう」「温泉なんて行ってやしませんよ、お嬢さん」「ウソつき。秘密主義者!」。そうしたら渥美さん、涙こぼして笑って、ハンカチで涙拭いて、帽子脱いで頭の湯気まで拭いて、「お嬢さん、あなたほんとにバカですね」と言ったの。後で奥様に聞いたら、そのころ渥美さんは本当に具合が悪くて、まったく笑うことがなかったって。
林:山田洋次監督の映画の一コマみたい。力を振り絞って黒柳さんに会いに行ったら、トンチンカンなこと言われて、おかしかったんでしょうね。沢村さんや渥美さんとは、NHKの「若い季節」というドラマでご一緒だったんですよね。あのドラマ、すごい人たちがいっぱい出ていて。
黒柳:一人で番組を持てるような人たちが、45人出ていたの。