「この対談で、『どんな資本主義社会であろうと社会主義社会であろうと、(略)社会はひき締まった筋肉を持たなければいけない』と、仰っています。司馬さんが日本に言いたかったことは、これに尽きます」
司馬さんが週刊朝日で最後に対談をしたのは経済評論家の田中直毅さんとの「日本人への遺言」。96年2月3日に行われ、その9日後に司馬さんは亡くなっている。住専問題で揺れるなか、司馬さんは倫理を失った政治家、大蔵省、銀行などを痛烈に批判した。
<次の時代なんか、もう来ないという感じが、ぼくなんかにはあるな。(略)ここまでブヨついて緩んでしまったら、取り返しがつかない。少なくとも土地をいたぶったという意味での倫理的な意味で決算をしておかないと、次の時代は来ない>
そういっていた司馬さんの表情は怖いほどだった。それから20年、日本社会はどれだけ引き締まった筋肉を取り戻したのだろうか。
※週刊朝日 2015年12月25日号より抜粋