「ヒラの直系組長なら会費は月10万円。盆、暮れ、誕生祝いもない。経費が安いうえ、『神戸山口組の看板でもメシが食えそうだ』との感触もあり、結構人気を集めていると聞く」

 分裂前の山口組に所属し、何らかの事情で6代目に絶縁された組員たちが、神戸山口組に復帰する動きも出ているという。無論、神戸山口組も組員獲得に躍起だ。関係者によると、神戸山口組から「年末年始が来る前にこちらに移籍しないと、いいポジションがもらえないぞ」と、電話で勧誘された組長もいるという。

 これから抗争はどう展開するのか。山口組系暴力団の元組長で作家の石原伸司氏(77)はこう話す。

「『ヒットマンによる殺し合いはいつ始まるのか』なんて聞かれるが、それはない。そんなことをしたら、組長が使用者責任を問われて逮捕され、長い刑務所暮らしをするはめになる。金があり、いい暮らしをしている組長はそんなまねはしない。二つの山口組は、話し合いの末に協議離婚したようなもの。これからも均衡を保ち、人集めで争っていくだけだろう」

 暴力団対策法で指定された暴力団は21団体。そのうち松葉会、稲川会など11団体が山口組と交際があるとされる。溝口氏が言う。

「分裂以前の山口組は徳川幕府のような存在で、司組長や高山清司若頭が後見人を務める他団体の“大名”もいる。大名が盆や暮れに推定1千万円以上を持参して山口組に挨拶に行く慣習もあったが、それをやめそうな団体もある」

 そうした事情が絡み、山口組の分裂は、他団体の分裂をも誘発しかねないという。“群雄割拠”の時代が来るのだろうか。

「とはいえ、いま勢いのあるのは若い人が入る半グレ集団で、暴力団組員はどんどん高齢化し、分解が進んでいます」(溝口氏)

 そう遠からず、暴力団の勢力図は一変するのかもしれない。

週刊朝日 2015年11月6日号