そして武本さんも木幡さんも、福島第一原発の、ある問題を指摘した。それは1・2号機の排気筒だ。

「排気筒について、全く東京電力からの説明はないです。余りにも放射線量が高く、誰も近寄れないと聞いていますが、東電も国も早く、国内外の科学者とともに対策を出さないと駄目でしょう。付近の住民を帰還させるなんてとんでもないです」(木幡さん)

「あの排気筒が地震などで倒れたら、周辺自治体も福島第一原発内も高濃度に汚染される恐れがあり、廃炉作業ができなくなる可能性もある」(武本さん)

 高さ120メートルの福島第一原発の1・2号機排気筒。2011年3月の事故の際、この排気筒から高濃度の放射性物質が外に排気された。そのため、今もこの排気筒の内部には高濃度の放射性物質が残っていると見られている。この排気筒の地面近くでは、最大で1時間当たり25シーベルト(東電推定値)もの放射線量が測定されている。人がそこに十数分いただけで死亡するとされる値だ。しかもこの排気筒の中央部で部材の破断や変形などが複数見つかっている。1号機の水素爆発が原因とみられているのだが、そのため耐震性に懸念の声が上がっているのだ。

(ライター・松崎大陽)

週刊朝日 2015年10月30日号より抜粋