「ずっと“ミュージカルをやるために生まれてきた”って言われるぐらいになろうって思っていたので。今もまだ通過点、という感じです。ただ、実際に舞台に立ってみて思ったのは、“実はお芝居が一番重要なんじゃないか”ってこと。歌の持つパワーは大きいので、ともすれば感情を歌に乗せるという、芝居の部分はごまかすことができてしまうんです」
もっと芝居を強化したいと思い、ミュージカル以外の舞台や、ドラマなどの映像作品にも積極的に出演するようになった。舞台と違って、“映像は監督のもの”と割り切り、「俳優部として、自分の役割を淡々とこなす」ことの喜びも、最近は実感している。JAMSTEC(海洋研究開発機構)を舞台に描くWOWOW連続ドラマW「海に降る」では研究チームの地質学研究者を演じる。
「“深海”という自分がまったく知らなかった世界とじっくり向き合うことができて、刺激になったし、視野も広がりました。知らなかった世界を知ることは、自分を豊かにしてくれるものだなって、新しい役をいただくたびに思います」
理想を絵に描いたような経歴と人格の持ち主。どんなふうに教育したら、こんな優秀な子が育つのだろう。
「両親が児童教育の専門家で、この年頃の子に何を言ったらどう反応するかとか、いろいろ実験してたと言ってました(笑)。でも、“こうしなきゃダメ”とか、追い詰められたことはなかったです。今でも、“ダメだったらいつでも福岡に帰ってきなさい”って言ってくれます」
※週刊朝日 2015年10月2日号