世界を見渡すと、1973年のオイルショック以降、都市から農村に移住する「逆都市化」の動きが先進諸国で起こりました。イングランドの湖水地方では村の9割が移住者という地域もあります。しかしこれは自分のルーツとは無関係で、景観の美しい地域に行こうという農村回帰の流れです。

 それに比べて、孫ターンは極めて日本的で興味深い現象です。定住社会が高度成長期にいったん弛緩し、そこに揺り戻しが起こり、1世代飛び越して孫が帰る。戦後の社会を俯瞰して眺めると、孫ターンは日本社会論のど真ん中のテーマと言えるかもしれません。

 全国の農山漁村がこの動きに気づくと、大きなうねりにつながる可能性があります。たとえば、地方自治体の首長が孫世代に直接手紙を出すようなアプローチをすれば、さらに孫が戻る原動力になります。これから積極的に呼びかけてはどうでしょうか。「地域の孫よ、帰ってこい!」と。

週刊朝日  2015年8月28日号