夫:そうそう。忘れてたんだよね。新居のキッチンをどうするか、お前考えろよ、って言ったら「私でいいんですか?」って。それで改めて「あ、やばい。俺、結婚申し込んでなかった!」と(笑)。

妻:だって、家を建てるのはこの人じゃないですか。結婚の約束もしてないのに、私が設計に口出ししていいんですか?と。もしかしたら、私が設計したキッチンに他の女性が立つかもしれないわけでしょ?

夫:それで大慌てで結婚しよう、って話して婚姻届を出した。

妻:付き合い始めたときだってそう。好きだとも、付き合おうとも言われてない。

夫:僕ね、過去の経験から、もう、がんばる恋愛はやめよう、って決めてたんですよ。自分を良く見せようとか、ね。どうしても若いころはがんばっちゃうでしょ。そうすると、結局、自分じゃないだれかを演じることになる。背伸びしたところで大して変わらないのにね。だけど、自然体の自分を受け入れてもらわなくちゃ、続かないなと。

妻:彼の「自然体」に付き合った結果、デートはほとんど、ゴルフか新橋のガード下でしたけどね(笑)。

週刊朝日  2015年8月14日号より抜粋