「昔は土日の家族連れのお客さんが多かったんですけどね。今は平日のほうが多いね」
日曜が定休日になったそうである。
そもそも中華料理店に、なぜチキンライスやオムライスがあるのだろうか。
「先代は、もともと山王ホテルで修業していたんですよ。だから、洋食も得意だったみたいですよ」
登喜和のチキンライスも、もとは先代のホテル仕込みの洋食だったわけだ。
登喜和の人気メニューには、カツ丼や親子丼もある。利通さんが言う。
「昔はね、そばやかき氷なんかもあって、“なんでも屋”みたいでしたよ」
忙しいランチタイムには、近くに住む鴨田さんの長女と姪が手伝いをしてくれている。いずれはこのチキンライスの味も継承されていくのだろうか。利通さんは笑った。
「いえいえ。私の代までですね」
当代限りの味のようである。
(太田サトル)
※週刊朝日 2015年8月7日号