生活保護費の支給は月初めなので、月末になると金欠の不安からうつ状態になる。弟が今年1月に病死すると独居となった。近所づきあいはない。
「近所の人は自分の存在も知らないのではないでしょうか。月に2回作業所に通うほかは、ほとんど人と話しません」
全国の高齢者を対象に、健康と社会環境の関連を調べる大規模調査を率いる千葉大学の近藤克則教授は説明する。
「所得や学歴が低い人ほど健康状態が悪いという格差を『健康格差』と言います。以前は日本では格差は小さいと思われていましたが、調査をしてみると、明らかな健康格差の実態がわかってきました」
寿命やうつ状態のほか、下流老人のほうが、転倒やケガをしやすい、歯がほとんどない人が多い、慢性腎臓病になりやすい、といった健康格差の実態が明らかになってきた。
近藤教授は解説する。
「民間病院で臨床医として脳卒中リハビリテーションを担当していたときに、生活保護を受けている患者の割合が、全国平均よりも患者において高いことに気付きました。また、生活保護を受けている患者ほど、退院して自宅へ戻るのが難しかったのです」
(本誌・長倉克枝)
※週刊朝日 2015年7月31日号より抜粋