自民党内の勉強会「文化芸術懇話会」で報道機関に圧力をかける発言が出た問題。作家の室井佑月氏はこういう。

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 これってさ、また馬鹿にされた、なんて軽い話じゃないよね。マスコミよ、拳を振り上げ怒り狂え。

 6月26日付の毎日新聞によると、

安倍晋三首相に近い自民党の若手議員約40人が25日、憲法改正を推進する勉強会『文化芸術懇話会』の初会合を党本部で開いた。安全保障関連法案に対する国民の理解が広がらない現状を踏まえ、報道機関を批判する意見が噴出した」らしい。記事によると、出席議員から、

「マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい」

 という声があがったという。これこそマスコミの「存立危機事態」だわ。マスコミの存在や、その意味までが否定されたんだもの。

 いや、そんなことはないのか? 今回の出来事だって、マスコミのお偉いさんとご飯を食べにいって、

「お手柔らかに」

「そちらこそお手柔らかに」

 談笑、みたいなことで終わる話なんかいな。

 そこであたしは思っちゃったね。なぜ、そういったことを他国とやろうとしないのだろうか。それができたら、いきなり集団的自衛権の行使容認、なんて話になりっこないじゃない。

 
 国内マスコミを懐柔するのは簡単だけど、他国との交渉や話し合いは面倒だからか。その面倒くさいことをやっていただきたくて、あたしたち国民は議員の身分や生活を支えているんだけど。

 そうそう話を戻して、25日の「文化芸術懇話会」で、講師として招かれた安倍さんのお友達の作家が、

「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」

 そう主張したみたいだ。彼はその後、ただのジョークと言い訳したみたいだがほんとかな。

 安倍さんのまわりにはろくな人がいない。暴力的排外主義の極右市民団体や、ネオナチの思想を掲げる活動家と繋がりのある議員。

 安保関連法案で安倍さんの味方をする憲法学者は徴兵制もOKで、応援文化人には核武装論を唱えるものまでいる。

 マジで自分らの意見を通したいがために、中国や北朝鮮が、ちょろっとやってくれないか、そんな危ないこと考えていたりしてね。

 そういったことをつい想像してしまうのも、彼らのやり方のせいなんだから仕方ない。

 小林節慶大名誉教授が安保法制を合憲とする憲法学者たちに、公開討論を呼びかけているけどどうなった?

 安保法制で国民の理解が広がらないことを懸念しているんだったら、仲良しのマスコミ幹部に頼んで、「徹底的に反対派と公開討論できる場をつくってくれ」といったらいい。そっちからいってくれたら、縮こまっているマスコミも大喜びだろ。

週刊朝日  2015年7月17日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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