C型肝炎治療は注射薬のインターフェロンの副作用から解放され、飲み薬だけの時代に突入しつつある。厚生労働省肝炎治療戦略会議のメンバーで、大阪府済生会吹田医療福祉センター総長の岡上武(おかのうえたけし)医師に、最新治療の現状や注意点などについて聞いた。

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 インターフェロン中心の治療で高い確率でC型肝炎ウイルスが排除できるようになり、肝がんの死亡率も年々、低下しています。ただ、インターフェロンは発熱や倦怠感などの副作用が強く、高齢者などには投与しづらい面がありました。そんな中、昨年9月にダクラタスビルとアスナプレビルが登場し、状況は大きく変わりました。

 共にウイルスの増殖を阻むメカニズムを持ち、2種類の併用でインターフェロン治療以上の高い効果が期待できます。副作用が軽く、注射でなく飲み薬という点も大きな特徴です。高齢者や入院できない患者さんに投与しやすく、さらに、インターフェロン治療の対象でなかった初期の肝硬変(代償性肝硬変)も適応になり、従来、肝庇護療法で経過観察を余儀なくされていた患者さんへの大きな福音となりました。

 注意したいのは、肝がんの発症です。ウイルス感染が持続すると肝臓の細胞が破壊され、肝組織の線維化が進行します。その結果、肝硬変や肝がんに至るわけですが、いくらウイルスを排除できても、線維化が進んでいるほど治療後も発がんの危険性は高く、肝臓専門医のもとで定期的に検査を受けることが大切です。また、副作用が軽いとはいえ肝機能障害や高熱がみられることもあります。

 1型に対するインターフェロンフリー治療は現在、ダクラタスビルとアスナプレビルの24週間併用投与のみですが、ソホスブビルとレジパスビルという抗ウイルス薬を1剤にまとめた合剤や、オムビタスビル、パリタプレビル、リトナビルの3種類の抗ウイルス薬併用療法が認可される予定です。共に治療期間が12週間と短く、ウイルス陰性化率も95%以上が期待できます。C型肝炎の約3割を占める2型でも、ソホスブビルとリバビリンの併用によるインターフェロンフリー治療がスタートしました。

 C型肝炎の治療は猛スピードで進化しています。この病気が根絶される日も、そう遠くはありません。

週刊朝日 2015年6月12日号