以前は15センチほど切って背筋を背骨から剥離する手術が実施されていたが、MIS‐TLIFは3~4センチの切開で筋肉をあまり傷めず、出血量についても約400ccから50~100ccに減った。その分、術後の痛みや感染へのリスクが少なく、社会復帰も早い。

 田村さんは手術を受けるか否か悩んだ。腰部脊柱管狭窄症は、進行すると痛みや、しびれで休み休みにしか歩けなくなる間欠跛行(かんけつはこう)があらわれる。

「同じ病気でも、年齢や罹病期間によって状態はさまざまです。事故でもない限り急激に悪化することはないので、慌てて決める必要はありませんが、神経症状が進んでしまうと手術しても手遅れになることもあります。手術のタイミングの見極めは大事でしょう。しびれは要注意です。軽いしびれなら手術で改善しますが、ジンジンと痛むような両足のしびれは手術をしてもあまり良くならない傾向にあります。生活を自分の病気に合わせていくのか、やりたいことにからだを合わせるために手術するのか。その人の生き方次第なのです」(同)

 佐藤医師の「からだへの負担が小さくなったため、以前より痛みも少なくなりました。約1週間で退院できますよ」という言葉が背中を押し、田村さんはMIS‐TLIFの手術を受けることを決断した。

 田村さんは手術の翌日から立つことができ、翌々日から歩いてトイレなどへも行けるようになり、術後約1週間で抜糸して退院した。

「移植した骨は取り出すことはありません。癒合するまでには3~6カ月かかるため、術後1カ月は常に装具で固定します。歩くことはリハビリテーションになりますが、重い家事などは控える必要があります。歩けば1カ月でだいぶ筋力が戻ります」(同)

 約半年後、田村さんは無事ゴルフに復帰した。佐藤医師のアドバイスを守りながら、今では思いきり趣味を満喫している。

週刊朝日  2015年6月5日号より抜粋