絶不調のヤクルト投手陣 東尾修が「自分流」のススメ 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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絶不調のヤクルト投手陣 東尾修が「自分流」のススメ

連載「ときどきビーンボール」

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週刊朝日#東尾修

 開幕から好調だったチームに陰りが見え始める5月。西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、スランプのときこそ「自分流」が大切とこう助言する。

*  *  *
 プロ野球は5月中旬を迎え、また違った形がチームに出てくる。開幕してずっと好調をキープしてきていたとしても、必ず調子の波があって、落ちてくる。何より、打者が開幕直後よりも振りが鋭くなるし、投手陣には疲れも重なる。

 ヤクルトはチーム防御率が1点台という驚異的なスタートを切ったが、5月に入って連敗を喫したように、投手陣にほころびが出始めている。その状態から再び上昇カーブを描けるのか、苦境が続いてしまうのか。選手個々がしっかりと考える頭を持っているかにかかっているよ。

 試合を追うごとに相手球団にはデータが入る。そして自分たちに入るデータもより精密になる。例えば、カウント球の傾向であったり、同じボールを続けたりの捕手の配球の癖もそろってくる。今まで打者の裏をかいていた配球が、裏をかけなくなることだってある。

 その時、投手が一番考えるべきことは、打たれた原因、抑えた要因をデータに頼ってはいけないということだ。キャンプ、オープン戦を通じて考えていたことをもう一度思い出してほしい。自分の球をいかに投げられるか、勢いのある球を投げられるかと、自分を見つめていたはずだ。

 特にルーキーは、ガムシャラにめいっぱいいっていたところに、データや自身の傾向も入ってくる。だが、一番大事なことは、そのボールの制球力であったり、球威が落ちていないかを客観的に見ることだ。データを駆使しても、裏をかく技術力が身についていなければ、自分にないものを出そうとして自滅し、さらに失敗が重なる。ミスをどうとらえるかで成長度は変わる。

 私が現役時代にはなかったほど、精密なデータがそろうからこそ、その取捨選択は本当に大事だよ。私が西鉄(西武の前身)に入団した時は試合で負け続けた。その時に今のようなデータなんてない。直球がプロで通用しないならば、いかにして生きぬく道を見つけるかに必死だった。そして直球を見せ球に変化球の効果的な組み合わせだったり、打者への洞察力だったりを磨いていった。

 西武で言えば、十亀が今季は見違えるほど球に勢いがある。彼は、相手の打者の弱点を攻めるよりも、いかに球威ある球を投げ込むかに集中すべきだ。逆に野上のように制球力で勝負する投手ならば、データで投球を変えてもいいが、データ通りに制球できないことも想定すべきだ。その日の調子の良しあしは必ずある。まず、試合の中でそれを早く見極めた上で、データを活用すべきである。

 自分の頭で考えて自分の生きるべきスタイルを知ること。その後に相手打者との比較をすべきだ。結果を出せていたものが、スランプに陥る原因は、自分を見失うことから始まる。ヤクルトの投手陣は、打たれている原因がどこにあるのかを自分の頭で考えることだ。首脳陣に言われて修正するのではない。打者も同じだ。自分で悩み抜いて出した結論を信じて実践し、また壁にぶち当たればさらに修正すればいい。

 交流戦にまもなく突入する。違うリーグのチームとの対戦になるし、データの少ない中での戦いになる。自分のスタイルを貫けるかで、活躍の度合いも変わる。一つのミスですべてが終わるわけではない。私は、プロ入り後の3年間は通算で19勝36敗だったのだから。

週刊朝日  2015年5月29日号


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東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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