だが、実はこの時、NHKは大きな言論の危機の渦中にあった。「クローズアップ現代」の“やらせ疑惑”でNHK副会長が4月17日、自民党の情報通信戦略調査会に呼び出され、党本部で事情説明を行ったのである。

「報道ステーション」での元経産官僚の古賀茂明氏の発言が問題視されたテレビ朝日の専務も同時に呼び出され、同会の川崎二郎会長は報道陣に「(政府には)テレビ局に対する停波(放送停止)の権限がある」とまで語り、海外メディアなどでも、政権与党の言論介入だと報じられた。

 日本を代表するメディアであるNHKの会長が何を語るかと思いきや……。NHK局員は呆れかえる。

「ただ、情報を漏らすなと職員を恫喝するために作られた動画ですね。NHKも普段、官庁の職員などから情報漏洩してもらって報道番組を作っているわけで、自らの不祥事だけ漏らすなというのは、こんなにおかしいことはない。言論統制、恐怖政治ですよ」

 テレビ局への露骨な「圧力」だと指摘された異常事態の中、NHKは同28日、「クロ現」問題について「『やらせ』はないが、『過剰な演出』や『視聴者に誤解を与える編集』が行われていた」という最終報告を公表。国谷裕子キャスターが番組内で涙ぐみながら謝罪し、担当記者が3カ月の停職となるなど、関係者が処分を受けるに至った。

(今西憲之/本誌・小泉耕平)

週刊朝日 2015年5月22日号より抜粋