13年7月にタイとマレーシアでビザを免除した結果、1年間でタイからは20万人、マレーシアからは7万人観光客が増えた。それだけではない。14年10月に免税制度が変わり、免税品目の拡大も追い風となった。

 13年に最も多く来日したのは韓国、続いて台湾、中国、米国、香港だったが、14年は韓国を抜いて台湾が1位になり、韓国、中国、香港となった。

「今年1月に、中国でビザの要件を緩和したこともあり、今後は中国からの観光客が増えるでしょう。消費総額も3兆円に達するかもしれません」(太田さん)

 政府は東京五輪の20年に2千万人の外国人観光客を呼び込む目標を立てているが、このまま円安が続けば、今年にも1500万人を超え、来年に目標を達成してもおかしくないという。

 特に、中国人は最も消費額が多く、14年は総額5583億円(全体の27.5%)にもなった。中国では5月に3連休の労働節休暇、10月には国慶節がある。連休があるたびに“爆買い”が期待できるというのだ。

 訪日外国人の“インバウンド消費”をにらんで、銀座では、観光客を受け入れるための開発が急ピッチで行われている。

 免税店を兼ね備えた商業施設の建設のほか、三越伊勢丹グループは、三越銀座店の免税カウンター枠を広げて、店内で外国語対応のスタッフを増員。8階のフロアを空港型免税店に改装して、購入した商品を羽田、成田の空港内で受け取れるようにするという。

 さらに、中国の富裕層は、もっとおいしい食事や、かけ流しの温泉を求めて、団体から個人旅行にシフトしているという。『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』(中公新書ラクレ)の著者でジャーナリストの中島恵さんが言う。

「富裕層の間では“癒やし”がテーマになっています。茶の湯や歌舞伎などの伝統文化、神社仏閣めぐりなど、ほかの中国人団体観光客が絶対に来ない、名旅館、高級ホテルで静かに過ごしたいという声をよく聞きます」

 オーダーメイドのツアーの要望に応えようと、日本各地の観光地ではインフラ整備が急ピッチだ。注目したい点はまだある。

「14年には大型クルーズ船での訪日客が、前年と比べて24万人増の41万人に達しました。大型客船が寄港できるよう、長崎県の佐世保市のように、港湾拡張工事を行う港も出ています」(太田さん)

 インバウンド効果の波は、確実に日本の地方にも浸透している。少子高齢化で将来の消費の伸びが期待できないニッポン。外国人観光客の“爆買い”が、日本経済を救うかもしれない。

週刊朝日 2015年5月8-15日号