その「無念」が妖怪として実体化した存在、それが時計GUYである。

「誰もが知っているのに、背景や本来の姿を知られず、がっかりされる。そんな無念のスポットである時計台を、無念の象徴として選んだんです」

 時計GUYの生みの親、札幌市の企画集団、くつした企画の黒田拓さんが言う。

 その無常観のようなものに、“中の人”、岩田直也さんは魅かれた。

「よく見ると、悲しい目をしているんですよ。悲しみを背負ったダークヒーロー的な魅力を感じて、『こんなカッコイイの、かぶっていいの?』と思ったんです」

 時計GUYは、隠れた札幌の魅力をウェブやコミュニティーFMで発信する、“妖怪記者”。

 時計GUYとして市内を取材するが、

「取材先でギョッとされることもあります。200メートルぐらい先からでもわかるのはいいんですがね」

 高層ビルの立ち並ぶ札幌の街でも時計GUYはよく目立つ。無念は少し晴れているかもしれない。

週刊朝日 2015年4月17日号