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 皇太子さまは今月23日、いまの天皇陛下が即位した年齢である、55歳の誕生日を迎える。この節目に合わせるように、韓国から皇太子さま「訪韓」の招請状が届いた。これまで何度もその機会はあったが、今回も日韓関係に改善の兆しは見られず、平成皇室最大の課題ともいわれた「訪韓」は、幻に終わった。

 元朝日新聞編集委員の岩井克己氏は、この「皇太子ご夫妻訪韓」問題を密着して取材してきた。

 このとき、宮内庁参与として国際交流の分野で当時の皇太子ご夫妻の相談にのってきたのが、歴代の韓国大使でもとりわけ韓国側に信頼が厚いと言われた須之部(すのべ)量三氏だった。岩井氏によれば、須之部氏はこの件を踏まえて、天皇や皇太子の訪韓についてこう述べた。

「訪韓は、南北統一後か、南北同時訪問が実現するような時代にならない限り、難しい」

 岩井氏は、正面から天皇、皇后が訪韓すべき重い歴史的課題だけに、そうした環境にない現状では皇太子さまの「訪韓」は、やめたほうがいいと感じている。

「日韓国交正常化50年、戦後70年にあたる今年は確かに、絶好の節目ではある。両陛下の年齢を考えれば10年後は難しいかもしれない。しかし、節目の年でなくても両陛下が自ら訪韓される環境が整う可能性も消えてはいません」

 ときに皇室は「最強の外交カード」(外務省関係者)とも称される。

 自らがどのような立場に置かれても、両陛下をはじめ皇族方のスタンスは一貫して変わらない。人びとに寄り添い、対話を続ける。

 皇室は長い間、韓国への想いを示してきた。

 戦前に梨本宮方子(なしもとのみやまさこ)女王(李方子[イバンジャ]さん)が朝鮮王室に嫁ぎ、「日韓の架け橋」と呼ばれ、戦後も三笠宮ご夫妻や秩父宮妃が私的に訪韓するなど交流は続いた。そして02年のサッカーW杯では高円宮ご夫妻が皇族として、初の公式訪問を果たした。07年には、高円宮家の次女、千家典子さんも韓国を私的に旅行している。

 両陛下は、皇室と朝鮮半島とのゆかりについて、幾度かお言葉で触れた。

 天皇陛下は、01年の誕生日前の会見や10年の平城遷都1300年記念祝典で、「桓武天皇の生母が百済(くだら)の武寧(ぶねい)王の子孫であると、続日本紀(しょくにほんぎ)に記されている」と述べている。

 皇后さまは、90年に、こんな歌を詠んでいる。

 対馬より釜山(ふざん)の灯(あかり)見ゆといへば韓国の地の近きを思ふ

 隣国はいつまで、近くて遠い国であるのだろうか。

週刊朝日 2015年2月27日号より抜粋