「彼らは、こんなところに来る外国人はスパイだと疑います。実際、米軍はピンポイントの空爆でイスラム国幹部を殺害するなど、組織のかなり深い内部情報をひそかに得ています。ですから、民間の外国人を発見した場合、まずは必ずスパイ容疑で取り調べるのです」(外報部記者)

 その外国人がスパイだと判断されれば、簡易の裁判らしきものが行われ、処刑ということになる。実際、1月にはイラクで拉致されたロシア人が、スパイ容疑で少年兵に射殺される場面の映像を、イスラム国はネットで公表している。

 スパイ容疑が晴れた場合も、彼らはそのまま解放したりはしない。これまでのケースでは、ほぼすべての人質に対して身代金を要求しているのだ。こうしたイスラム国の徹底した方針によって、シリアではいわば誘拐産業が形成される事態になり、「年間40億~50億円」(国連報告)を稼ぐという。イスラム国の兵士以外の地元の不良住民のなかに、イスラム国に売りつける目的で外国人を誘拐する輩が急増している。

 ジャーナリスト、援助関係者であっても、イスラム国の勢力圏に立ち入ることは、きわめて危険な行為になったのである。

(軍事ジャーナリスト・黒井文太郎)

週刊朝日 2015年2月6日号より抜粋