特定秘密保護法の危うさ 米国と違う日本の「知る権利」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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特定秘密保護法の危うさ 米国と違う日本の「知る権利」

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首相官邸前で秘密保護法に反対する人たち=14年10月14日 (c)朝日新聞社 

首相官邸前で秘密保護法に反対する人たち=14年10月14日 (c)朝日新聞社 

運命の人(一)

山崎豊子著

978-4167556068

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 12月10日の施行される特定秘密保護法は政府による「情報隠し」「言論弾圧」といった危惧が残るなか、映画監督の森達也氏(58)は「知る権利」が守られなくなると問題点をこう指摘する。

*  *  *
 安倍首相は閣議決定前から、「諸外国では当たり前にある法律。国家の機密を守るために必要だ」と言い続けてきた。たしかに米国にも同じような制度がある。百歩譲ればその理屈は間違っていない。けれど、米国では情報公開のシステムが確立され、「知る権利」がきちんと担保されている。基盤となる体質が日本と大きく違う。

 1972年の米国ウォーターゲート事件で、内部情報をワシントン・ポスト記者2人が入手してスクープを連発し、ニクソン大統領を辞任に追い込んで、記者たちにピュリツァー賞が贈られた。事件は映画になり、記者もホワイトハウスの関係者も皆、実名で登場する。これが米国のすごさで、ジャーナリズムがきちんと機能している。

 前年にはニューヨーク・タイムズが、政府の極秘文書ペンタゴン・ペーパーズを暴いてベトナム戦争終結のきっかけを作っている。

 同じころ、日本でも沖縄返還密約問題があった。毎日新聞記者だった西山太吉さんは、密約の存在を示す電文コピーを外務省の女性職員から入手したけれど結果として、西山さんと女性は国家公務員法違反で起訴され、毎日新聞は謝罪した。

 超一流のスクープが、いつの間にか男女問題一色となり、密約そのものに注目が集まらず終わった。国民は知る権利を行使せず、メディアも筆を曲げた。この件を題材にした山崎豊子作『運命の人』もドラマ化されたが、新聞社名も記者名も匿名。日本は「隠す」文化なんだと感じる。

 あれから42年。その体質は何ら変わらない。メディアは権力を監視して何かあったら吠えねばならないのに、政府のスポークスマンのよう。特定秘密保護法という強いカードを政府に持たせることは、極めて危険。国民の「知る権利」はより一層守られなくなるだろう。

週刊朝日  2014年12月5日号


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