巨人・阿部が一塁へコンバート その意味は「チームに危機感を与えること」? 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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巨人・阿部が一塁へコンバート その意味は「チームに危機感を与えること」?

連載「ときどきビーンボール」

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週刊朝日#東尾修
クライマックスシリーズで打撃不振だった巨人・阿部 (c)朝日新聞社 

クライマックスシリーズで打撃不振だった巨人・阿部 (c)朝日新聞社 

 元西武ライオンズのエースで同チームの監督も務めた東尾修氏は、巨人・阿部のコンバートに注目しているとこういう。

*  *  *
 巨人の阿部慎之助が一塁へコンバートされるという。来季は一切、捕手として起用されることはない。徐々に一塁の割合を増やすというのではなく、一気に決断した。原辰徳監督、そして阿部本人の意見が一致しなければ、できないことだ。

 捕手というポジションは日々、こなすべきことが多い。ワンバウンドのブロック練習から、スローイング練習などもそうだ。バッテリーミーティングにも参加するし、試合の中では、常に投手陣をリードする。チャート表を見て、投手陣とその試合の基本的な組み立てを考えるのも大切な作業だ。だから、捕手は打撃に割く時間が限られる。まずは試合の中で大きなウエートを占める守備、リードというものを考え、打撃はその後になる。

 だが、阿部は違う。打撃力は、日本最高の打者と言われるまでになった。打線の中で阿部にかかる負担はここ数年増えるばかりだった。打撃が好調な時であれば、放っておいてもよかった。しかし、今年のように打撃不振になれば、早出特打も行うし、修正作業に追われる。打撃のことが頭に残っていれば、守備にも影響を与えてしまう。今年、試合の中でも、ピンチのとき守備隊形のサインを出すのを忘れたのかな、と思うシーンも見受けられた。

 35歳。年齢的にも衰えと闘う年にさしかかった。体をもう一度作り直す作業を行うには、捕手という重みを考えた場合、難しいよ。打力は衰退の一途をたどるだけだ。だから、一塁に回して守備の負担を減らすことで、彼に体作りや打力を取り戻すための時間を十分に与えるということではないかな。阿部慎之助の野球人生を考え、長く野球をやるための決断。慣れ親しんだポジションを明け渡すことには不安もあるだろうが、阿部にとっては未来が開けると思う。

 私も西武の監督時代に捕手の高木大成を一塁へコンバートした。清原和博が巨人へFA移籍して抜け、若手を積極起用して足を生かしたチームに変貌させようとした。打力だけでなく、大成は足が速かった。しゃがむ姿勢の多い捕手は、足の負担が大きい。攻撃力を生かすコンバートだった。だが、あの時とは決断の重みがまったく違うよね。

 原監督が「慎之助のチーム」と公言するほど、阿部は攻守にわたる大黒柱だ。その守備をあきらめるわけだからね。

 捕手はルーキーの小林や、実松、加藤といったベテラン勢でカバーするにしても、不安のほうが大きいよ。今年だって100試合前後、阿部が先発マスクをかぶったわけだから。小林が投手陣に遠慮せず、そして投手個々の性格をわかって気持ち良く投げさせることができるか。一塁に回った阿部がマウンドで助言できるとはいえ、一球一球口出しはできない。今年は他球団にFA権を持つ捕手がいる。捕手補強もテーマの一つとなるだろう。

 利点は、大黒柱の部分にメスを入れたことで、チーム全体に危機感を与えられることだ。阿部という絶対不可侵と思われた領域にメスを入れたわけで、今後は聖域なきチーム改革を断行できる。救援左腕の山口鉄也も肘に不安を抱えるなど、救援陣のテコ入れも急務になった。2年連続で日本一を逃した巨人、原監督が来季の開幕まで、どういった改革を行うのか。注目して見ていきたい。

週刊朝日  2014年11月14日号


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東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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