今回の土砂災害で濁流にのまれて全壊した住宅と車(撮影/写真部・松永卓也)
今回の土砂災害で濁流にのまれて全壊した住宅と車(撮影/写真部・松永卓也)

 ゲリラ豪雨が頻繁に起こるようになった日本では、大水害はいつでもどこでも起こりうるものとなった。しかし、自宅が全壊しても公的支援では、最大300万円しか援助されないのが、現実だ。

 公的支援が頼れないなら、個人で備えを十分にするしかない。そのために外せないのが、火災保険だ。

 高台だから水災は関係ない。保険額も高くなるし──と保険プランから水災補償を外す人が多いようだが、今回の広島県の水害からもわかるように、高台だから水害が起きないとは言い切れない。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんは言う。

「ハザードマップなどから、住環境のリスクをしっかり把握しておくと安心。水害の危険性があるなら、水災補償をつけることも検討しましょう」

 水災を補償する保険には、東京海上日動火災保険の「トータルアシスト住まいの保険」、セゾン自動車火災保険の「じぶんでえらべる火災保険」、損害保険ジャパン(9月1日に日本興亜損害保険と合併)の「THE すまいの保険」などがある。損保ジャパン広報部によると「自然災害が頻繁に発生していることで最近、問い合わせ件数も増えている」という。

 なかには、「住宅総合保険」など、2010年の火災保険自由化前の保険に入ったままの人もいるようだが、保険料を支払い済みでも見直しは可能。ファイナンシャルプランナーの山口京子さんは、保険内容の確認をしたほうがいいという。

「昔のものは、家と家財のどちらも最大で評価額の70%までしか補償されません。各社が今販売している保険だと全額補償されます」

 70%でも十分な気もするが、山口さんは言う。

「2千万円の一戸建てで、全額補償で2千万円がもらえるのと70%補償で1400万円もらえるのとでは、600万円も差が出てきます。最悪の被害時にどれほど補償されるかが大事。もちろん、水災補償は家財と建物の両方にかけたほうがいいですね」

 また、新しい住宅を購入できる費用(再調達価額)を補償してくれる保険を選ぶことも大事だ。

「時価タイプの保険に加入している人は、年数が経って建物の価値が下がったらその分の保険金しかもらえませんが、再調達価額だと、同等の住宅を再築または再取得するのに要する額が支払われます。もし、今契約しているものが、時価になっていたら見直すことも有効です」(風呂内さん)

 ただ、途中で解約した場合に戻ってくる返戻金の額は契約ごとに異なるのでご注意を。

 最近は、住宅ローンで自然災害の特約がついたものもある。三井住友銀行の自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン(約定返済保障型)は自然災害による被災の程度に応じて最大2年のローン返済相当額が免除になる。負担は融資利率に0.1%上乗せする程度だという。今回の広島の水害も当てはまるので、このようなローンを検討してみるのも一案だ。

(本誌取材班=上田耕司、西岡千史、永野原梨香、牧野めぐみ/今西憲之)

週刊朝日  2014年9月5日号