物価高に収入減。すでに消費減退の条件はそろっているのだ。

 安倍首相もこのままでは経済が橋本不況の二の舞いになると思ったのか、7月25日に、

「(今秋の)臨時国会に向けて地方の創生と女性の活躍にかかる法案を準備していきたい」

 と宣言。地方の産業活性化と女性の登用を促す法案を準備するよう、関係閣僚に伝えた。

 だが、ある地方自治体の首長は嘆く。

「地方創生と言いながら、やろうとしていることは、地方が出した提案を、国が審査するということ。これは『お前は俺に頭を下げに来たから、1億円の予算をつけてやる』という世界ですよ。結局は、税金がムダに使われるだけ」

 投資銀行家の山口正洋氏も、景気対策がバラマキになることへの危機感がある。

「来年4月には統一地方選もあります。株価を維持するために、さらに公共事業を増やすでしょう。問題は、国は公共事業の建設費を負担しても、維持管理費の多くは自治体の負担になることです。これまでのハコモノ行政と同じで、この費用が地方の財政を圧迫する」

 98年の参院選で惨敗した橋本氏の後継は、小渕恵三氏だった。小渕政権は橋本緊縮財政を百八十度転換し、公共事業による内需拡大を目指した。97年度末に約258兆円だった公債残高は、いまや約780兆円。借入金などを含めた国の借金は1千兆円を突破した。これも消費増税を端緒とした不況が引き金となったのだ。

「財政赤字を膨らませることは一番やってはいけないこと。このままでは、財政再建のための消費増税が、かえって財政破綻を導くことになる」(山口氏)

週刊朝日  2014年8月8日号より抜粋