眼鏡やコンタクトがなくても、裸眼で遠くが見えるようになる手術、レーシック。大流行の兆しがみえた矢先の昨年末、消費者庁が待ったをかけた。「安易に受けることは避けるように」と注意勧告を発表したのだ。手軽さに潜むリスクを専門家が指摘する。

 眼科医団体「安心LASIKネットワーク」の会員である「みなとみらいアイクリニック」の荒井宏幸医師は、病院選びの大切さを説く。

「ガイドラインに沿っているのは当たり前です。その上で、時間をかけて適応検査をして、自分にとってのメリットとリスクを丁寧に説明してくれる病院を選ぶべきです。体質やどのような見え方になりたいかは、人それぞれだからです。たとえば、普段は眼鏡で視力0.8に矯正していて、それをレーシックで1.5に矯正したい人の場合、私なら、『急に視力を上げると、近くが見えづらくなる可能性があります。1カ月間、コンタクトで視力1.5を試してみましょうか』と提案を持ちかけたりします」

 正しい病院を選び、起こりうる見え方の変化についても医師と事前にじっくり話し合えば、トラブルはまず、起こらないという。

 3年前に手術を受けた30代の男性Bさんは語る。

「手術をした知人たちが皆、『大丈夫』と言うので、受けました。もともと私は左右の視力が違いすぎたので、眼鏡では矯正できる限界があったのですが、レーシックのおかげで両眼とも1.0まで回復しました。特に不具合は感じていません」

 それでも、「レーシックにはリスクがある」と警鐘を鳴らすのは、「日本コンタクトレンズ学会」の理事を務める「梶田眼科」の梶田雅義医師だ。

「客観的には何の問題もないのに、結果としては、その人に向けていなかったということが起こりえます。乱暴ですが、たとえて言えば、レーシックは望遠鏡を作っているようなもの。遠くが見えやすくなる半面、近くは見えづらくなります。さらに、角膜の中央部が削られて、その部分だけがレンズとして使われるため、光学面積が狭くなり、暗い場所で見えづらくなります。これらは普通であれば気にならない程度のものですが、まれに、そうではない人もいます」(梶田医師)

 他にも、暗い場所で光がにじむハロー・グレアや視力が戻ってしまうリグレッションなど、レーシックにはさまざまなリスクがある。

 そのどれもが、正しく手術が行われたとしても、一定の割合で起こりうるという。消費者は何を頼りにすればいいのか。

「レーシックは確立されている医療技術であり、メリットも実証済みです。全体から見れば、トラブルはごくごく一部でしょう。とはいえ、医療機関が公表していないため、トラブルがどれだけあるのか、正確なところはわかっていません。受けたい人は、不可避的なリスクも含めて、自分の眼にはどのような見え方の変化が生じうるのか、きちんと理解できるまで、医師から説明を受けることが大切です」(「医療問題弁護団」責任者・梶浦明裕弁護士)

 医療技術の進歩による恩恵とリスクをきちんと知るべきだ。

(本誌・福田一雄)

週刊朝日  2014年4月18日号