医師から診断が下されたときや治療方針が提示されたとき、他の医師の意見を聞くことが一般的になってきた。いわゆるセカンドオピニオン。その意義や重要性が広く浸透した一方で、「主治医に失礼」「心証を悪くする」といった不安から、躊躇(ちゅうちょ)する患者が多いのも事実だ。率直に言って、医師はどう考えているのだろう。2月21日発売の週刊朝日MOOK「手術数でわかる いい病院2014」の記事から紹介する。

「医師に遠慮する患者さんの気持ちはわかるし、伝わってもきます。でも、こちらはまったく気にしていないし、それで万一の見落としが防げるならそのほうがいい」

 そう言い切るのは日本医科大学武蔵小杉病院脳神経外科講師の太組一朗医師だ。もしセカンドオピニオンで異なる治療方針が提示されたら、患者の意見を尊重しながら治療方針を立てていくという。

 では、患者がセカンドオピニオンを取りたいと申し出て、医師は絶対に腹を立てないのかといえば、必ずしもそうとはいえない。一部の年配の医師や、若くても一つの術式にばかりこだわっている、言い換えれば、自分に自信がありすぎるような医師の中には、機嫌を悪くする医師が存在するのも事実だ。

 しかし、相手が医療の専門家である医師だからといって、何ものにも代えがたい健康や生命を預けるのは患者の側だ。「俺の言うこと」に従って命を差し出さなければならない理由などない。セカンドオピニオンを申し出て嫌な顔をされたら、それは医師を代えるチャンスと考えるべきだ。自分の考えだけを押し付ける医師とは、信頼関係が築けないだろう。

 あるアンケートでは、セカンドオピニオンを取った経験のある人の7~8割が、「セカンドオピニオンを取ったことで主治医(元の医師)との信頼関係が深まった」と答えている。セカンドオピニオンは「疑い」ではなく「信頼」を得る手段なのだ。

 では、どうすればセカンドオピニオンに好意的な医師と巡り合えるのだろう。前出の太組医師は苦笑しながらこう語る。

「もし『俺様の意見に逆らうのか』という医師に当たったとしたら、運が悪かったというしかない。ただ、医学部の教育でもセカンドオピニオンの重要性は刷り込まれているので、これからは“俺様医者”は確実に減っていくはず。遠慮する必要はまったくないので、どんどん尋ねてほしい」

 患者は医師に向かって高圧的な態度を取る必要はないが、医師に服従する必要もない。セカンドオピニオンは堂々と求めればいい。健康も生命も自分のもの。医師のものではないのだから。

週刊朝日 2014年2月28日号