秋が深まり、グッスリ眠れる季節と思いきや、寝つきが悪い。焦れば焦るほど目が冴える……など眠りに不安を抱える人は少なくない。

「やばい。乗り越した!」

 東京都内在住の男性(40代)は、朝の通勤電車で居眠りをして、会社の最寄り駅の二つ先まで行ってしまった。慌てて逆方向の電車に乗り直したが、大事な会議に遅刻してしまった。

「ゆうべは早めにベッドに入ったのに、眠れなくて……」

 一方、神奈川県在住の女性(50)も、「最近よく眠れない」とこぼす。

「羊が1匹2匹と数えてもきりがない。揚げ句の果てに夜中におなかがすいちゃった」

 二人のように寝つけなかったり、寝ても途中で目が覚めてしまい、どうも寝た気がしないという「睡眠難民」が増殖しているようだ。

「眠りに悩みを持つ人をネットで募ったら、8万9千人から反応がありました。日本は昔から『眠らない国』と言われていますが、24時間社会の実現で、その傾向はますます高まっているのではないでしょうか」

 こう話すのは、杏林大学医学部精神神経科学教室の古賀良彦教授。健康を考える上で、食生活、運動習慣の改善や禁煙はよく話題になるが、休養は「二の次」。それが、ここへきてやっと注目されるようになった。

「厚生労働省が掲げる現代人の健康テーマ(健康日本21)にも『休養』が入っています。睡眠も健康に重要な因子だと、多くの人に意識してもらいたい」(同)

週刊朝日  2013年11月8日号