米国 金融緩和継続で膨らむ「副作用」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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米国 金融緩和継続で膨らむ「副作用」

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閉鎖する政府機関 (c)朝日新聞社 

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 リーマン・ショック以降、「100年に一度」の金融危機に見舞われ、米国が人類未到の超金融緩和策に深く入り込んで5年。瀕死の“体”に劇薬を打ち続け、やっとのことで景気に明るさが見え始めたが米連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシート(資産状況)はすでにパンパンに。取り返しがつかなくなる前に、正常な状態に戻そうと「異常」から「正常」への「出口戦略」のためバーナンキFRB議長は、「今年中にも縮小プロセスに入る可能性がある」と発言。すると、世界中の株式相場がパニックになった。

 こうしたなか、緩和策をけん引してきたバーナンキ議長が来年1月で任期を終了する。このため、後任のジャネット・イエレン副議長が出口戦略という大役を担うことになった。どんな人物なのか。

「バーナンキ議長と二人三脚で超金融緩和策を打ち出してきたため、政策の継続性という点では、安心感がある。サンフランシスコ連銀総裁を6年間務め、夫はノーベル経済学賞のジョージ・アカロフ氏。洞察力に非常に優れており、2005年の時点で、『米国の住宅市場はバブルだ』と分析していたほどです」(東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト)

 イエレン氏は金融緩和を急激に引き締めない「ハト派」と言われており、「出口」が緩やかになるため、市場関係者の評判はおおむね良好だ。

 バーナンキ議長との違いは、より雇用を重視するケインズ主義者だということ。しかし、これが思わぬ“リスク”になるという。ズルズルと超金融緩和策を続ける可能性があるため、副作用が膨らみかねないのだ。東洋英和女学院大の中岡望教授が指摘する。

「バーナンキ議長は共和党員でした。イエレン氏はオバマ大統領と同じ民主党員。このため、来秋の中間選挙まで、金融緩和にこだわる可能性がある。雇用状況が改善すれば、現政権の民主党に追い風が吹くからです」

 米国の議会は、上院が民主党、下院は共和党が過半数を占める「ねじれ」の状態。イエレン氏は民主党員として、ねじれを解消したいと考えてもおかしくはないという。

 実際、米国の失業率は危機直後のピークの10%から、直近では7.3%(8月)まで低下してきたものの、FRBが目標とする6.5%まではほど遠い水準だ。だが、前出の中岡氏は、「金融緩和では雇用は改善しない可能性がある」と指摘する。

「お金をジャブジャブにしても、銀行の貸し出しは増えていない。企業の生産活動が活発にならないと、雇用は増えにくい」

 東短リサーチの加藤氏もこう言う。

「米国の企業はグローバリゼーション(世界展開)化やIT(情報技術)化、機械化などが進んでおり、キーパンチャーや秘書、工場のラインで働く人などの仕事が少なくなっている。米国には構造的な雇用の問題が潜んでいる」

 出口戦略を探るタイミングで、雇用が改善せずに、超金融緩和策を続けた場合、何が起きてしまうのか。株式ストラテジストの中西文行氏が説明する。

「最悪の場合、悪性インフレを起こします。FRBがバランスシートを肥大化させ続ければ、ドルの信認を失くしてしまうからです」

週刊朝日 2013年10月25日号


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