米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向け、防衛省が県に埋め立て承認を申請したことについて、沖縄タイムスが県内の全41市町村長にアンケートを実施。すると、そのうち36人が「評価しない」と答えた。沖縄への配慮に欠けるさまざまな対応に作家の室井佑月氏も怒りを露わにしている。

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 だいたいさ、埋め立ての許可権を持つ仲井真弘多(なかいまひろかず)県知事が、以前から辺野古への県内移設を、「事実上、無理」と何度もいっていたではないか。知事の下の市町村長も反対しているのだ。

 なのに、なんでそこを飛び追え、政府は埋め立ての申請手続きを強行するの? てか、法治国家において、そんなこと許されるの? やっぱ、アメリカには逆らえないからか。逆らえないっていうか、交渉してる? きちんと交渉をしているのなら、日本人の人権を軽視する日米地位協定ぐらいは、とっくにどうにかなっていていいと思う。

 交渉の機会はあったはずなのにね。最近でいえば、去年、米海軍兵2人が共謀して沖縄県の女性を強姦した。有無をいわせぬ、オスプレイの普天間基地への配備も酷かった。

 しかし、そういった時も、仲井真知事は一人で頑張った。彼はこの国がなんにもしてくれないので、キャンベル国務次官補(当時)やリッパート国防次官補と会談しにアメリカに行った。この国がなにもしてくれないというより、当時の政府の発言は、問題を小さくし、頑張る仲井真知事の足を引っ張っているように、あたしには見えた。ま、沖縄に米軍基地があるから中国や北朝鮮に牽制できてるのだ、という人もいる。

 でも、アメリカはこの国のトモダチではない。こちらも、思いやり予算など金をたくさん出している。だから、少しは交渉してみてよ、そう感じるのはおかしいことなのか。

週刊朝日 2013年4月19日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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