TPP参加における情報を隠したりする政府へ苦言を呈してきた作家の室井佑月氏。TPP反対派を取り巻く状況について、「あたしがちょっとおかしいと思っていたことが、ズバリ当たってしまった感じ」と感想を述べる。

*  *  *

 この国の権力者たちからすれば、もう決まってることなんだから、話を蒸し返すような人間は邪魔なんだな。

 3月21日の衆議院総務委員会で、自由民主党の大西英男議員がこのような発言をした。

「テレビ朝日、8時からの【モーニングバード】で丁度、安倍晋三総理がTPP参加を表明した直後の放送だった。そこで孫崎享(うける)という評論家、これ外務省出身だが、この人がTPPというのは『もう交渉の余地はない。決まってるんだ。今からでは手遅れだ』、あるいは『これはアメリカの国家利益に奉仕する枠組みで、日本はアメリカの植民地化してしまう』。こういう事を、メインコメンテーターとしてとうとうとやっている。それで私は孫崎享氏の今日までの政治的な発言について調べてみた。とんでもないんですね」

 そして大西議員は、孫崎氏がどうしてNHKに出られるのか、というような発言までした。 総務委員会でする話なのかね。でも、このアホ……じゃなかった大西議員のおかげではっきりした。

 やっぱり、そうだったんでしょ。TPP反対を訴えると、業界的にヤバい。仕事を降ろされることまであるかもしれない。

 ま、今回の大西議員のチョンボで、国民の目が孫崎氏や「モーニングバード」に向けられ、却(かえ)って安全になったかもしれないけどさ。

 反対も賛成も、ぶつかり合うのが正しい。そのやり取りを見て、国民が理解することもあるだろう。反対するやつは消す、みたいな野蛮なことはやめれ。

週刊朝日 2013年4月12日号

著者プロフィールを見る
室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

室井佑月の記事一覧はこちら