「日本国憲法第7条により、衆議院を解散する」

 11月16日午後3時50分、横路孝弘衆院議長(71)が解散詔書を手に宣言すると、衆院本会場に集まった与野党議員たちはお約束の万歳三唱で応じた。12月に行われる「師走選挙」は、29年ぶり。田中角栄元首相の実刑判決を受けて国会が空転し、中曽根康弘元首相が衆院解散に踏み切った「田中判決解散」以来のことだ。

 週刊朝日の「衆院選300選挙区当落予測」(10月19日号)で「11月解散、12月総選挙が望ましい」と語っていた時事通信社解説委員の田崎史郎氏はこう話す。

「民主党からくしの歯が欠けるように離党議員がボロボロと出ていた状況からしても、もはやリセットすべき時期でした。野田佳彦首相(55)は今夏、『近いうちに国民に信を問う』と当時の谷垣禎一自民党総裁(67)と約束していたときから、年内解散の腹を決めていたようです」

 11月14日の党首討論で、野田首相は自民党の安倍晋三総裁(58)に、「(来年の通常国会で議員定数の削減をやり遂げると)ご決断をいただければ、私は今週末の16日に解散をしてもいいと思っている」と日付を明示して解散を確約。自民党は首相の提案を受け入れ、衆院の一票の格差を応急的に是正する「0増5減」と、定数削減が実現するまで議員歳費を2割カットする法律などが成立した。

「目の前で解散の日付を宣言された安倍さんは動揺を隠せず、党首討論は野田さんが押し切る形で完勝しました。野田さんは国民がもっとも嫌がる消費増税法を成立させ、国会議員がもっとも嫌がる定数削減に道筋をつけた。非常に難しい課題を解決した宰相と言えるかもしれません」(田崎氏)

週刊朝日 2012年11月30日号