江川紹子氏が被災地で見た「語り合うことの大切さ」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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江川紹子氏が被災地で見た「語り合うことの大切さ」

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1年半が過ぎた午後2時46分、手を泡合わせる人たちがいた=9月11日、宮城県石巻市で (c)朝日新聞社

1年半が過ぎた午後2時46分、手を泡合わせる人たちがいた=9月11日、宮城県石巻市で (c)朝日新聞社

 ジャーナリストの江川紹子氏は、あの日から1年半が過ぎた被災地での新しい取り組みを取材した。

*  *  *
 東日本大震災から1年半が過ぎた。人々の間で衝撃が薄らいでいく一方、大切な人を亡くした人々の悲しみはむしろ深まっている、と聞く。そんな、経験者でなければ分かりにくい思いを語り合う「わかちあいの会」が被災地各地で生まれつつある。

 9月11日には、郡山市で福島「わかちあいの会」立ち上げシンポジウムが開かれた。

 主催したのは、自殺対策に取り組むNPO法人ライフリンク(清水康之代表)。遺族が安心して胸の内を語れる場を作ろうと、自死遺族らのサポートグループ「福島れんげの会」などと協力し、昨年10月に福島県で最も死者が多かった南相馬市で活動を始め、さらに今年夏から福島市、郡山市など県内5カ所でも会を立ち上げた(一部は準備中)。

 シンポジウムでは、相馬市の保健師・佐藤宏美さんが会に参加した体験を語った。震災前は夫と夫の両親、祖父母、それに2人の子どもの8人家族。家にいた祖父母が津波で流された。祖父の遺体は、夫も確信が持てないほど傷んでいた。日頃介護をしていた佐藤さんが、体の特徴などを確認。せめて火葬の前に体をきれいにしてあげたかったが、それもままならなかった。

 その後、保健師として被災者を支える忙しい日々を送っていたが、しばしば祖父母を思い出した。自分は何一つできなかった、と自分を責め、「押しつぶされそうになった」という。それでも、家族の中ではこうした話はタブーのようになっていて、切り出すことはできなかった。

「わかちあいの会」の存在を知ってから半年以上経って、思い切って訪ねてみた。そこでは、自分の思いを存分に語ることができた。

「あのもやもやした辛さは、後悔だったんだなぁと分かって、心の中にその気持ちをしまう場所ができた感じがしました。ようやく、生活もままならない悲しみからは抜け出すことができました。何年経っても悲しみはなくならないだろうけど、語り合うことで、少しでも気持ちを整理できる」

※週刊朝日 2012年9月28日号


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