泣く子も黙る国税局の徴収官だった民主党議員が、消費増税法案に反対票を投じた。その議員とは当選1回の橋本勉(べん)衆院議員(58)。社会保障制度改革推進法案などには賛成したが、長妻昭元厚生労働相(52)ら周囲の説得には耳を貸さず、消費増税には反対を貫いた。

「デフレ期に消費増税したら、企業の破産が続き、税収は確実に落ち込みます。野田さんは『ギリシャにならないため』と言ってますが、まさにそのギリシャになっちゃいますよ」

 1980年から東京や名古屋の国税局に10年近く在籍し、差し押さえの現場にも幾度となく足を運んだ。自転車やオートバイで毎日、徴収先を回った経験から、国民の税に対するシビアな感覚が手に取るようにわかるという。

「行った先で『うちより先に取るところがある』って、今と同じような文句をよく聞かされました(苦笑)。こんな時期に税率を上げたら、滞納者が増え、生活保護費が増大するだけです。財務省は全部わかっているのに、それでも増税をしたがっている」

 国税局退職後は金融機関で研鑽を積んだ。6月25日の民主党の臨時代議士会では、各種の数字を分析した上で野田首相に増税を思いとどまるよう進言したが、ほぼ無反応だった。

「野田さんは、世界恐慌のときに無策だったフーバー米大統領になりますよ」

 離党はせず、今後も党内で主張を続けるという。

※週刊朝日 2012年7月13日号