ジャズ好きでさまざまなライブハウスを訪れる料理研究家の行正り香氏。そんな彼女がこれまでジャズスポットに行って気付いたことがあるという。

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 私はけっこう、いろいろなジャズスポットに一人で出向きます。アメリカならニューヨークのビレッジ・バンガード、オークランドのヨシズバー、そして東京ならばビルボードライブやブルーノート。まずはスパーリングワインをオーダーして、それから白ワインなど飲みながら、素敵な音楽にカラダを揺らしまくります(笑い)。誰かと一緒のときは、共に過ごす時間も大切ですが、一人で行くときは、単純にアーティストだけと向き合える貴重な時間でもあります。
 一つ気がついたのは、世界的に有名なアーティストたちには大の日本ファンが多いということ。海外でライブに行くと、アーティストに「あなたは日本人? 私は日本、大好き。日本のブルーノートのほうが、ニューヨークよりも好きなくらい」と言われたりするのです。日本人のホスピタリティーはワールドクラスで、そのあたたかさが彼らの日本好きに繋がっているのかもしれません。そんなコトバをかけられると、「日本人でよかったな、うれしいな」と素直に思います。
 たとえ好きなことでも、何十年も続けるのは大変なことです。でもライブに行くと、同じことを長く続け、いろんな刺激を得ながら変化する一流の人に会える。その瞬間にもらえるものは、お金で買えるものではありません。洋服を一枚買うのも素敵ですが、ライブの一夜を買うのも素敵です。

 今週のレシピ「春雨豆板醤炒め」は本誌で紹介しています。

※週刊朝日 2012年5月18日号