宇宙最大の謎、「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」。その解明に、ハワイにある日本のすばる望遠鏡が挑戦する。成功すれば、アインシュタインを超えるノーベル賞級の発見となりうる。

*  *  *

 宇宙全体の23%を占めながら、見ることも触ることもできない暗黒物質。その強い重力が銀河や星を生み出すもとになったと言われているが、正体は分からない。
 一方、暗黒物質とは逆に、宇宙をどこまでも引き裂こうとするのが暗黒エネルギー。こちらは暗黒物質よりも多い、宇宙の73%を占めていながら、物質ですらない。しかも宇宙がどれだけ膨張しても薄まらないという、お化けのような存在だ。
 宇宙はこれら未知の物質とエネルギーのせめぎあいで発展してきたことが、最近の観測で明らかになりつつある。もし、暗黒エネルギーがどんどん増えて宇宙を引き裂いたらどうなるのだろう。
 素粒子物理学の世界的権威で、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の村山斉(ひとし)・機構長(48)が描くのは驚愕の未来だ。
「このまま暗黒エネルギーが増え続ければ、やがて私たちの天の川銀河は、ほどけてばらばらになるでしょう。太陽系では海王星など外側の惑星から次々と外へ飛び出していき、太陽は膨れあがって爆発します。地球では大地が裂け、山も海も粉々に砕けて宇宙へ飛び散っていく。そしてついに物質自体が素粒子に分解され、宇宙は空っぽになってしまうのです」

※週刊朝日 2012年5月18日号