ロンドン五輪男子マラソンのカンボジア代表に決定し、3月26日に都内で喜びの記者会見を開いたお笑いタレントの猫ひろし(34)。
アスリートとして臨んだ会見での「ゴールでは最高の五輪ギャグを披露したい」という発言に、違和感を感じた人も少なくないはずだ。
まじめに五輪出場を目指し、練習していた選手たちはこのニュースをどう受け止めただろうか。
彼の国には2008年の北京五輪男子マラソンで代表となったブンティン(26)という選手がいる。彼は今もロンドンを目指して練習中で、本誌が2月24日号で報じた通り、4月に行われるパリマラソンで2時間31分58秒という昨年の自己記録の更新を狙い、既に合宿地のケニアからフランス入りしたという。
つまり、カンボジアの五輪委員会は、前回の五輪代表にロンドン挑戦の意志があるにもかかわらず、その最新の走りを見ずに猫のロンドン派遣を発表してしまったのだ。半月後のパリでブンティンが2時間30分26秒という猫の記録を上回ったらどうするつもりなのだろう。
最も懸念されるのは、ブンティンが五輪の参加標準記録B(2時間18分)をクリアした場合だ。猫は誰も標準記録をクリアできない場合の特例として派遣されることになっている。ブンティンがこの記録を上回った場合はどうなるのか。
同国のアマチュアスポーツ連合のペン事務局長は「その場合、2人を派遣する」と話していたというが、本誌が国際電話でペン事務局長を直撃すると「わからない」「情報がない」を連発するばかりだった。
ブンティン自身はどう受け止めているのだろう。
「公式のコメントは出ていません。というのも、猫の帰化申請に推薦状を書いた観光大臣は五輪委の会長でもある。日本へのPR効果を期待しての起用だったともいわれています。言論の自由が確保されていないカンボジアで、政府を批判するような発言はできない」(カンボジア在住の報道関係者)
※週刊朝日2012年4月13日号