東京電力福島第一原発の事故から1年。水素爆発によってセシウムなどの放射性物質が大量に放出された。今、それはどこにあるのか。『週刊朝日』記者が、朝日ジャーナル「わたしたちと原発」(朝日新聞出版)の企画で、測定キットを使ったセシウム計測に挑んだ。

 福島県内で除染活動などに取り組む徳島大学アイソトープ総合センターの佐瀬卓也講師は話す。

「今でも多くが土の表層にあるとみていいでしょう。事故当初に汚染された土やほこり、枯れ葉、針葉樹などに多く付着し、それらが雨水と一緒に流れて側溝や道路わきに集められていると考えられます。マンホールや排水溝の周辺の土、くぼ地などで高い濃度が検出されることがあります」

 つまり、セシウムは雨水がたまりやすい所に集まっているというのだ。そんな場所は私たちの身の回りにも少なくない。

 そこで、分析・計測機器の分野で実績のある堀場製作所(京都市南区)のシンチレーション式環境放射線モニタと放射能簡易測定キットを購入。首都圏ではホットスポットが比較的多いエリアとされる千葉県市川市の記者の自宅や近所の公園などで、土壌や落ち葉、水を採取し、それぞれに含まれるセシウム濃度(ベクレル値)の測定を試みた。結果は、自宅の樋の下の土が1キロあたり583ベクレル、裏庭のコケが1298ベクレル、近所の公園の池の泥が2057ベクレルなどだった。

 ほかにも、今回、この市販キットを使って、東日本各地の水や食品、土壌などを独自に測定した(詳細は朝日ジャーナルに掲載)。

 セシウムという"やっかいな隣人"とどう付き合えばいいのか。それを考える上でも、身の回りの放射能量を知ることが、ますます重要になっている。

※週刊朝日2012年3月23日号


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