「素人とは思えないくらいにうまい。会うまでに時間をかけるべきかと尋ねて、先延ばしになりそうにみせることで、早く会ったほうがマシだと考えるように自然に誘導している。さらに、会ったことがない人とメールをするのは怖いと示唆し、自分のほうが不安を抱いている立場だと印象づけている」

 結果、大出さんは2日後にJR神田駅で会う。その夜、木嶋被告は「会った人にはその日のうちに礼状を出す」というマナーの基本を踏まえつつ、こんなメールを送っている。

〈今日はありがとうございました。私の住所をお伝えしておきますね。再来週、またお会いしましょう〉

〈妹に紹介する日は24日か25日でどうでしょう。今日お会いして、想像以上に素敵な方で......〉

 前出の渡部さんによれば、これらの文面もポイントが高いという。

「男性にとって女性の住所と年齢はもっとも聞きづらい質問です。それを女性から教えてもらえると楽ですし、自分を信頼してくれているんだ、とうれしくなってしまう。しかも家族に紹介するとなれば、これは自分を認めてくれている証しだと確信します。舞い上がるのは当然ですよ」

 翌日からは、より親愛の情を深めつつ、資金援助については家族に言うなとくぎを刺すのも忘れない。

〈今日、学校で進級したいと伝えました。嘉之さんの厚意にどう応えたらお返しできるか考えています。私といることで、幸せや愛情を感じてほしいと思っています。私の家族は、学校のことで悩んでいると知っているので、嘉之さんが助けてくれることは家族にも伝えています。ただ嘉之さんの家族には援助したことは言わないでほしいです〉

〈お会いしてからずっと、嘉之さんのことを考えてしまいます。こういうドキドキがあるなんて〉

【(下)に続く】

週刊朝日