就労ビザ取得が間に合わず、この日はスタンドで観戦しただけだったが、ひとまずその船出を1-0の勝利で飾ることができた。

 

 サッカージャーナリストの六川亨(ろくかわ・とおる)氏は、新監督の印象をこう語る。

「イタリア人にしては冗舌ではなく、物静かで穏やかな人。イタリアで主流の守備を重視したサッカーではなく、ダイナミックな攻撃サッカーを志向している。日本サッカーをバージョンアップしてくれる期待感があります」

 ザッケローニ氏は、イタリア・セリエAの名門「ACミラン」で指揮を執り、98~99年シーズンにリーグ優勝を果たしたという華やかな実績がある。ただ、その後は際立った成績を残せていないことや、代表監督の経験がない点を不安視する声も出ている。

「ミランでの優勝は優秀な選手がいたから。その選手たちも彼が育てたわけではない。ハーフタイムでは『話していいのはオレだけだ。黙って聞いていろ』と選手に絶対服従を求めたと聞いている。温厚そうに見えて、実は"オレオレ"な監督です」(スポーツ紙記者)

 スポーツライターの金子達仁(たつひと)氏は、新監督をこう分析する。

「日本がやってきたポゼッションサッカー(ボールの保持率を高め、試合の主導権を握ること)と、ザッケローニ氏の攻撃的サッカーはタイプが違う。とはいえ、サッカーはやってみないとわからない。どんな化学反応が起きるか楽しみだ」

 一方、日本サッカー協会の関係者はこう明かす。

「選考基準は、日本に足りない攻撃面をどれだけ上積みできるか。本命はほかに何人もいたんですが、条件面で断られた。最後は『えいっ!』と、技術委員長の原博実さんがずっとコンタクトを取っていたザッケローニ氏に決めたんです」

 残り物には福がある、と信じたいけど。

週刊朝日