世界はムシが支配している!? 6月4日は「虫の日」です 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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世界はムシが支配している!? 6月4日は「虫の日」です

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かつては虫の一種?

かつては虫の一種?

完全変態の代表格といえば蝶

完全変態の代表格といえば蝶

小豆島の虫送り行事

小豆島の虫送り行事

「6(む)4(し)」の語呂合わせから、6月4日は「虫の日」。漫画の神様、故・手塚治虫氏らによって設立された「日本昆虫クラブ」が「虫の住める街づくり」を目指して提唱し、制定された記念日です。ここでいう「虫」とは「昆虫」のこと。「虫と共生できる環境」とはどんなものか、改めて昆虫、そして虫について考えてみたいと思います。

虫・蟲・ムシ・・・意外なあれもこれも、昔は虫だった

昆虫とは、節足動物門に属する汎甲殻類六脚亜門昆虫綱(学名 Insecta)の総称で、わかりやすく言えば海老やカニなどと近縁で脚が六本、翅がある(退化したものもあり)節足動物の一種、ということです。
子供の頃、昆虫と蜘蛛とは別とか、蜘蛛やムカデは昆虫じゃないんだよ、なんて教えられた人も多いかと思います。虫なんかには興味ない、できれば姿も見たくない、と思ってる虫嫌いの人は、虫は虫でしょ、脚が何本とか体の構造とか区別自体意味がないじゃん、どーでもいい、というのが本音だったのでは。
大体「虫」というとき、昆虫以外の蜘蛛やムカデ、ダンゴムシなどの陸生の節足動物、それにナメクジやミミズ、ヒルなどの小型の環形動物も含めて使われることも普通にあるわけで、実際、蜘蛛もムカデもカブトムシもワラジムシも、「虫は虫」というのも正しいわけです。
そればかりか、かつては「虫」という字はもともと「蟲」と書き、トカゲやヘビなどの爬虫類、イモリやカエルなどの両生類、ネズミやコウモリ、モグラなどの小型の哺乳類までも「蟲」に含まれていました。その名残は「蛇」「蛙」「蜥蜴」「蝙蝠」などの漢字の虫偏に残っています。また、得体の知れない想像上の生き物や病気や災いも「蟲」とされ、こちらも腹の虫・疳の虫などという言いまわしに残っています。かつては「虹」も大きな虫の一種と考えられてきました。
ですが、それらの中でなぜ昆虫が「蟲」の代名詞となり、虫といったらなぜ昆虫、ということになっていったかと言ったら、節足動物の中でのみならず、全世界でもっとも数も種類も多く繁栄している生物が、昆虫だからに他なりません。何しろ世界の全動物種のうち、なんとその大半は昆虫であり、まだまだ知られていない昆虫も多いといわれているのです。

宇宙からのインベーダー? 未だ解明されない完全変態昆虫の謎

昆虫が地球上に現れたのは、最新の学説では4億8千万年前。そして翅を獲得したのが約4億年前。地球上で始めて空を飛んだ動物といわれます。
昆虫は発生生態から不完全変態昆虫と完全変態昆虫に分けられます。不完全変態とは、卵から孵化したときには既に成虫の雛形をしていて、脱皮を繰り返して成熟する種類。トンボやバッタ、カマキリ、ゴキブリ、セミなどがその仲間です。完全変態とは、幼虫から「蛹(さなぎ)」という他の生物には存在しない特異なプロセスを経て、イモムシ・蛆虫状の幼虫から、まったく姿の異なる成虫になる種類で、チョウや甲虫、ハチやアリなどのほか、ハエやカ、ノミなども完全変態昆虫に属します。サナギのときにはそのほとんどは仮死状態となり、捕食者などの外的脅威に完全な無防備状態となります。サナギの殻の中で幼虫はすべての生体をどろどろに溶解させ、まったく違う構造を再構築して、文字通り「生まれ変わり」ます。
なぜこのような変態をするのか、現代でもほとんどその意味・理由はわかっていません。
完全変態をすることが、エネルギー摂取のみに専心する幼虫状態と生殖のみに専念する成虫状態とを分けることによって効率性があがるんだとか、生息域を変えることで生き残り数を多くする戦略なのだ、とかいう仮説もありますが、トンボやセミを見てもほぼそれらの説明にあてはまってしまい、しかも彼らも大繁栄していますから、それではサナギになる意味は説明できません。
完全変態昆虫の中でももっとも個体数が多く繁栄しているアリやハチなどの社会性昆虫(女王を頂点にしたカーストのある群れを作る種類)は、全昆虫の個体数の半分をハチとアリで占めるほど数が多く、無防備な幼虫やサナギを、成虫が巣の中で保護する生態は理にかなっていて(アマゾンの熱帯雨林ではハチ・アリだけで昆虫すべての半分を占め、全脊椎動物の重量の四倍もの重量になるハチ・アリが生きているといわれます)、一見その説明になっているように思えますが、不完全変態の仲間に属するシロアリや、アブラムシの一種もまた社会性昆虫として大繁栄しており、やはりサナギになるという選択の説明にはなりません。
このため、昆虫は実は別の星から来た宇宙人なのだ、という俗説も長く語られ続けています。実際、完全変態する昆虫の成虫は皆ほとんど地球上の食物を食べずにすごします。ホタルの成虫はまったく何も食べませんし、大きなカブトムシやクワガタも、樹液をなめるだけだし、チョウやガも、花の蜜や朝露を吸うくらいですよね。カやノミは動物の血を吸いますが、その習性もまさに吸血鬼というこの世ならぬ存在を連想させます。あの獰猛な肉食だと思われているスズメバチも実は成虫が獲物の肉を食べているのではなく、幼虫にすべて給餌しているのです。本人たちは幼虫からわずかに消化された液体流動物をもらっているのみ。
こうしてみると、完全変態の成虫とは、生きながら半ばもうこの世から離れた仙境にあり、霊魂化したような不思議な存在なのかも。本当に宇宙から来たのかもしれない、と思えてきます。

依り代(よりしろ)に災厄をたくして・「虫送り」行事とは

さて、今も日本各地の農村では六月初旬から八月初旬にかけて、「虫送り」という古くからの行事が行なわれています。農作物の発育に害をなす虫を、不幸な死をとげた人間の怨霊が化生したものと考え、その怨霊がとりつく人形をこしらえ、高く掲げて田畑を回って村境や川・海・山などの生活圏の外にまで送り返します。昔の人も昆虫を霊魂のように見ていたのでしょうか。
兵庫の虫送りは「サネモリさん」と呼ばれ、非業の死を遂げた平安末期の武将、斉藤実盛になぞらえ、害虫は斉藤実盛の怨霊が化身したものとして、人形に取り込んで「サネモリさんと虫送りおくった おくった稲虫おくった実盛さんは ごしょろくじゃよろずの虫 ついてこい」「イーネノムーシャラ・ゴーシャラク・サーネモーリヤー・サキダチジャー」などと歌い、鉦や太鼓を鳴らして村内を練り歩き、手厚く慰め祀って人間界からあの世に送り返します。
秋田県鹿角市の虫送りでは男女2体の藁人形を「ムシ」と呼び、その人形に村中の害虫や災いを取り込み、やはり村はずれまで太鼓を打って囃しながら練り歩き、人形は最後に川に流し(現在は燃やしています)、その年の豊作と、疫病が村内に入らないよう祈願します。
また、同地域を中心に東北から茨城、千葉にかけては虫送りを「鹿島流し」「鹿島送り」などともいい、「鹿島人形」と呼ばれる紙で作った武将の姿の人形をさおに挿してあらゆる害虫・疾病などの「蟲」を取り込み、村境や川べりなどに立ててそのまま賽の神のように境界神とする道切り、辻切りと習合した慣わしもあります。
なぜ虫に化生した怨霊を「サネモリ様」とか「鹿島人形」とかいうのかについては、いずれ別稿で改めて書きたいと思いますが、これらの農村の素朴な行事は、害虫を困った存在と感じながらも、ゆえあってこの世にやってきた命として、根絶やしにするのではなく神として送り返す昔の人の優しさが現れていて、共存、ということにもつながってくるのではないでしょうか。
何しろ人類よりもずっと多くの数がいる虫たち。うまくつきあっていかなきゃ、まさにきりがありませんよね。


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