イースターに先立ってキリスト教ではその準備期間として受難節(レント・Great Lent)は四旬節(四旬斎)が設けられています。期間は復活祭前の6回の日曜日(主日)を除いた40日間。40日間とは、キリストがおこなった修行・荒野の試練の40日間の断食に由来するとも、受難に先立つ40日間、特に弟子たち身近なものたちと親しみすごしたという伝承に由来するとも言われていますが、いずれにしてもキリスト教徒たちはかつては、また一部では今でも、この期間、肉、卵、乳製品、アルコールなどを断ち、節制と禁欲、祈祷に勤めて「主とともにある」日を過ごすことになっています。かなり長い期間ですよね。特に最後の一週間は厳しい断食や夜を徹した祈りなどの厳しい戒律の日々をすごすことになります。

 こうして迎えるイースターは、厳しい節制明けの祝祭となり、禁じられてきたタマゴをふんだんに使った料理が供されることとなるため、タマゴがそのシンボルなのです。肉や牛乳ではなくタマゴなのは、タマゴは死から(棺おけから)復活したキリストと同様、新たな命が生まれる蘇りの象徴とされるため。このため東方教会のイースターエッグ(卵の殻に彩色したもの)は、キリストの流した血を表す赤に染められます。節制の後の、タマゴやバター、牛乳をふんだんに使ったお菓子や、肉や魚料理はさぞ五臓六腑に染み渡ることでしょう。

 ドイツではオスターハーゼというウサギの形をしたパンを、イタリアでは鳩や子羊の形のパンを食べる風習が。また、フランスやスイスなどでは特に羊肉が供される他、やはりハムなどを含めた肉類料理がふんだんにふるまわれます。

 子供たちには、かつては森の中に色付きの卵を隠してさがさせるという宝探しのようなイベントもありました。

 このイースター・エッグは「イースター野うさぎ(Easter Hare)」がを産んだと信じる伝承があり、西方教会ではウサギもタマゴと並んでイースターの重要アイコンです。

 ウサギは多産で、春の祝祭のシンボルとしてふさわしいということと、ウサギは処女性を失わずに繁殖することができる、という迷信から、ウサギは聖処女マリアの眷属とかイメージとして定着しているから、と言う説もあります。

クリスマスが冬至、イースターが春分にあたるんなら、夏至と春分には何かある?

  ところでイースターというと、どうも私たちには石像遺跡の有名なイースター島(パスクア島)のモアイを連想してしまいませんか? 筆者はそうです。どうして復活祭ならたとえば「resurrection festival」とかじゃないんでしょうか。

 イースターの正式な名称はパスハ( Πάσχα、 Pascha)。これは先述したとおりユダヤ教の「過ぎ越し祭り」の名称をそのまま流用したもの。英語圏とドイツ語圏以外のほとんどの国ではこの「パスハ」に対応した名称で呼ばれています。イースターの名称はゲルマン神話の春の女神である「Eostre(エオストレ)」に由来しており、ギリシャ語のエーオース(Ἠώς、 Ēōs、EOS・曙光)、英語のEASTも、日が昇る方向であることから名づけられています。

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