収穫の秋です。小豆や金時豆が収穫され、栗や銀杏を拾うのが楽しみな季節です。
ところで、お赤飯には小豆、茶碗蒸しには銀杏を入れるのが一般的ですが、北海道ではなんと、お赤飯には甘納豆が乗り、茶碗蒸しには栗のかんろ煮が入っています。なぜ、そんな甘いものが…。でも、北海道ではなぜかこれが一般的なのです。

お赤飯の上に乗っているものは…。
お赤飯の上に乗っているものは…。

甘納豆入りのお赤飯は、札幌の私立学園の創設者が考案し、全道に広まった。

お赤飯に甘納豆が入っているなんて…。北海道に住んでいても、なぜ北海道には甘いお赤飯が存在するのか、不思議に思っている方も多いのでは。実は、この、なんとも不思議な甘いお赤飯の発祥の地は、札幌なのです。
女子短大と調理・製菓の専門学校などを運営する札幌の光塩学園の創設者、南部明子さんが考案しました。料理研究家でもある南部さんは、昭和30年代ころから北海道内を講演したり、ラジオや新聞に取材を受ける機会が多く、その際に、この甘いお赤飯を紹介して徐々に広まりました。
東北地方などでは、甘く煮た金時豆でお赤飯を作るようですが、豆を甘く煮るのはけっこう手間がかかります。そこで、甘納豆を混ぜれば簡単に甘いお赤飯ができる、ということで忙しい主婦たちに広まったようです。
作り方は簡単。もち米と白米に食紅で色をつけて蒸らし、砂糖を軽く洗い流した甘納豆を混ぜれば完成。小豆のお赤飯と同じく、ごま塩をかけて食べます。また、小豆のお赤飯に甘納豆をトッピングするという家庭もあります。
NHKドラマ「あまちゃん」で、甘いんだかしょっぱいんだかわからない、「まめぶ」という料理が登場していましたが、この甘納豆入りのお赤飯も、甘いんだかしょっぱいんだか…。
北海道内でも、お赤飯については小豆派と甘納豆派に分かれています。小豆派の人がおよばれで、甘納豆入りのお赤飯を出されたときは、先に甘納豆を食べてしまってから、残ったもち米にごま塩をかけるという作戦で、その場をしのいでいるようです。逆に、甘納豆派の人に小豆のお赤飯が出されたら、砂糖をかけて食べる…という話は聞いたことがありません。「甘みが足りなくて物足りない…」と思いながら、しょっぱいだけのお赤飯を食べているようです。

茶碗蒸しには、栗のかんろ煮。“甘いのか、しょっぱいのか”、不思議な味…。

スーパーで瓶入りで売られている栗のかんろ煮。用途としては和菓子、蒸しパン、そして茶碗蒸しの具。北海道の茶碗蒸しには、なぜか栗のかんろ煮が入っています。
そのほかの具は一般的な茶碗蒸しと同じで、鶏肉、しいたけ、たけのこ、かまぼこ、えび、みつ葉など。出汁の入った卵液も、一般的な茶碗蒸しと同じ味つけです。この、普通の茶碗蒸しに、甘い栗のかんろ煮がゴロンと入っているのです。ただ、蒸す前の卵液にかんろ煮の汁を入れたり、蒸しあがった茶碗蒸しにかんろ煮の汁をかけたりする場合もあります。そうなると、あまちゃんの「まめぶ」と同様、甘いんだかしょっぱいんだか…の世界です。
茶碗蒸しに栗のかんろ煮を入れるのは、北海道だけでなく、青森県でも見られます。少し南下して岩手県・宮城県に行くと、栗派と銀杏派に分かれるようです。そしてさらに南下して福島県あたりから、栗のかんろ煮は消え、スタンダードに銀杏が入った茶碗蒸しになります。
北海道の小豆は、作付面積で全国の約7割、生産量では約8割を占めています。北海道で栽培されている小豆には「普通小豆」と、煮ても形がくずれにくい大粒の「大納言」があります。一方、金時豆を見ると、北海道で栽培されているインゲン豆のうち、金時豆は約6割を占めています。中でも「大正金時」という品種は粒の形がよく、食味も優れているので、煮豆や洋風の煮込み料理のほか、甘納豆の原料としても使われています。豆といえば北海道。今年も豆の収穫は順調で、すでに今年度産の豆が販売されています。また、栗や銀杏も「不作」の知らせは特にありません。
小豆の大生産地であるはずの北海道。なのに、甘納豆を使った不思議なお赤飯。さらに、甘い栗の入った茶碗蒸し…。北海道の不思議な甘いテイストの食べ物をご紹介しましたが、あなたの住む県のお赤飯と茶碗蒸しには、何が入っていますか?