『ロード・ロック(1)』ニール・ヤング
『ロード・ロック(1)』ニール・ヤング

 2000年8月から10月にかけて、ニール・ヤングは、アメリカン・ロックの聖地の一つレッド・ロック・アンフィシアター(デンヴァー)での連続公演を含む北米ツアーを行なっている。
 バックを務めたのは、「フレンズ&レラティヴズ」と名づけられたユニット。同年春発表の『シルヴァー&ゴールド』に参加していた4人のベテラン・ミュージシャン、ベン・キース、ジム・ケルトナー、ドナルド・ダック・ダン、スプーナー・オールダムに、妻ペギと異母妹アストリッドを加えたラインナップだ(参考までに書いておくと、ペギはこのころから、おそらくニールに背中を押されてステージに立つようになり、07年に最初のソロ・アルバムを完成させている)。

 ツアー終了からわずか2ヶ月後の00年暮れにリリースされたライヴ・アルバム『ロード・ロック VOL.1』は、そのツアーを記録したものである。

 クレイジー・ホースとはまったく方向性の異なる、百戦錬磨の実力派たちとのツアーでのプログラムは、当然のことながら、ベスト・オブ・ニール的な内容のものだった。
《レイザー・ラヴ》や《バッファロー・スプリングフィールド・アゲイン》など『シルヴァー&ゴールド』の収録曲も取り上げられてはいるが、自身の分身でもある名曲の数々を、このラインナップでなければつくり得ない音で楽しむことに基本が置かれていたようだ。

 たとえば、《カウガール・イン・ザ・サンド》は18分、《ワーズ》は11分、《トゥナイツ・ザ・ナイト》は10分という徹底ぶり。「コアなファンしか楽しめない」といった批判も少なくなかったようだが、そんなこと百も承知といったところだろう。

 ハイライトは、オハイオ州で収録され、地元出身のクリッシー・ハインドも加わった《オール・アロング・ザ・ウォッチタワー》。これもまた、8分近い強烈なパフォーマンスだ。92年のボブ・ディラン30周年記念コンサートでニールは、ケルトナーとダック・ダンと、この曲を演奏していた。クリッシーも出演者の一人として近くから観ていたはず。
 あのときの手応えのようなものが、ニールを彼らとのツアーに向かわせたのかもしれない。[次回1/27(月)更新予定]

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大友博

大友博

大友博(おおともひろし)1953年東京都生まれ。早大卒。音楽ライター。会社員、雑誌編集者をへて84年からフリー。米英のロック、ブルース音楽を中心に執筆。並行して洋楽関連番組の構成も担当。ニール・ヤングには『グリーンデイル』映画版完成後、LAでインタビューしている。著書に、『エリック・クラプトン』(光文社新書)、『この50枚から始めるロック入門』(西田浩ほかとの共編著、中公新書ラクレ)など。dot.内の「Music Street」で現在「ディラン名盤20選」を連載中

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