ザ・ファースト~ジュニア・マンス トリオ Live at 3361 BLACK
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ザ・ファースト~ジュニア・マンス トリオ Live at 3361 BLACK
ザ・セカンド~ジュニア・マンス・トリオ Live at 3361 BLACK
ザ・セカンド~ジュニア・マンス・トリオ Live at 3361 BLACK

 ソウル派ピアニストを代表するジュニア・マンスのリーダー作は50作を軽く超える。衰えない人気の高さの証しと言えよう。ソウル派にありがちな過剰性のない、ブルースに根ざした語り口、小気味よいスイング感、優れた構成力が多くに支持される所以だろう。我が国で人気に火を付けたのは、ポリドールが「ヴァーヴ不滅のジャズ・シリーズ」中の1枚として1973年に発売した初リーダー作『ジュニア』だった。ジャズ喫茶で聴けたオリジナル盤は高嶺の花、復刻に狂喜したのは社会人1年目の筆者ばかりではあるまい。最高傑作の呼び声も高く、ピアノ・トリオ・ファンならずともお持ちの方が多いのでは。同作はパウエル派やエヴァンス派だけがモダン・ジャズ・ピアノ(・トリオ)ではなく、ウィントン・ケリーやレイ・ブライアントなど、ブルージーだがシンプルにエレガントにスイングするハッピー・ピアノ(・トリオ)の系譜があることも教えてくれたのだった。

『ジュニア』復刻以来の来日待望感の高まりをうけ1977年9月に初来日を果たす。再来日は1983年10月で、マーティン・リヴェラ(ベース)、アルヴィン・クイーン(ドラムス)を擁したマンスのトリオは山中湖畔のジャズ・ペンション「3361*BLACK」が招いた初の外人部隊だった。このときのライヴはハイファイ・ビデオ録りされたとある。翌年、これが切っ掛けで同所でジャズ・クラブが発足、その記念パーティに同じ顔触れのトリオが招かれた。このときもハイファイ・ビデオ録りされたが長い眠りに就くことに。「ファースト」セットと「セカンド」セットの2集からなる推薦盤が眠っていた記録だ。20年の時を経て発掘され、2集とも今は亡き某誌の【名盤蒐集クラブ】に選定された。同所の音空間を最大限に活かすべくマイクは5本のみPAなしのアコースティック収録、30年前の彼らの熱演と聴衆の熱気が生々しく眼前に蘇る。セッション毎に見ていこう。

 ファースト・セットは彼らの共作《グライディン・アンド・ストライディン》で幕開け。速めのミディアム、快適なテンポのオープナーだ。オスカー・ピーターソン・トリオをも彷彿させる安定感に快ライヴを確信する。《A列車で行こう》は無茶なテンポで疾走する超特急版で、途中駅は見過ごす勢いだ。スロウでしっとり綴るホーギー・カーマイケルの《我が心のジョージア》でマンスの魅力全開、タメをきかせブルースの蒼汁を滴らせる。これもカーマイケルの《スモール・フライ》は『ジュニア』にも収めたキュートな曲だ。ノリノリのミディアム・スインガーに腰も揺れる。ロリンズの《ソニームーン・フォー・トゥ》はファストで。ブルース色の濃い快演だ。スタンダードの《春の如く》はスロウで可憐に徹するかと思いきやミディアムに替えて心地よさそうにスイングし、マンスが一気呵成に弾き抜くスタンダードの《ガール・オブ・マイ・ドリームス》でセットを終える。

 セカンド・セットは自作の《ジュビレイション》で幕開け。『ジュニア』でお馴染みのゴスペル調の人気曲だ。タイトル通り歓喜に満ちたハードドライビングな快演となった。スロウの《エミリー》は箸休めの趣だが、これぞまさにソウルフル、粘りつつしっとり、ジョニー・マンデルの佳曲を濃紺に染めあげていく。ブライアントのマイナー・ブルース《アイ・ドント・ケア》はミディアムで。ご機嫌と言うほかない。リヴェラが獅子奮迅のロングソロを披露し、大団円を迎える。敏腕プロデューサー、エズモンド・エドワーズの《ファンキー・カーニヴァル》はラテン・ビートで。タイトル通り祝祭気分に沸き立ち、クイーンの手八丁足八丁、躍動的なロングソロにゾクゾクする。この夜のハイライトだ。ブルース歌手、アーサー・クルーダップの《ミーン・オールド・フリスコ・ブルース》はジャズ・ロック仕立て。ホットでノリノリの当夜を象徴する格好のクローザーになった。

 かっちりしたファースト・セットにリラックスしたセカンド・セット、ともに好意的な聴衆との交感が快ライヴに導いている。『ジュニア』『ザ・ソウルフル・ピアノ・オブ・ジュニア・マンス』(Jazzland)を愛聴されている方はコレクションに加えて損はない。上記のリンク先では品切れだが、CDは通信販売で、デジタル版はiTunesで入手できる。ともに詳しくは3361*BLACK records(http://www.3361black.com/CD/index.html)にて。[次回6/15(月)更新予定]

【収録曲】
The 1st. / Junior Mance Trio Live at 3361*Black (Jp-Tokuma/3361*Black)
The 2nd. / Junior Mance Trio Live at 3361*Black (Jp-Tokuma/3361*Black)

[The 1st.] 1. Glidin' and Stridin' 2. Take the A Train 3. Georgia on My Mind 4. Small Fry 5. Sonnymoon for Two 6. It Might as Well Be Spring 7. Girl of My Dreams
[The 2nd.] 1. Jubilation 2. Emily 3. I Don't Care 4. Funky Carnival 5. Mean Old Frisco Blues

Recorded at Jazz Inn 3361*Black, Yamanakako, on October 7, 1984.

Junior Mance (p), Martin Rivera (b), Alvin Queen (ds).

【リリース情報】
2004 CD The 1st. / Junior Mance Trio Live at 3361*Black (Jp-Tokuma/3361*Black)
    The 2nd. / Junior Mance Trio Live at 3361*Black (Jp-Tokuma/3361*Black)
2004 CD The 1st. / Junior Mance Trio Live at 3361*Black (Jp-3361*Black)
    The 2nd. / Junior Mance Trio Live at 3361*Black (Jp-3361*Black)

※このコンテンツはjazz streetからの継続になります。