ウォール・トゥ・ウォール・マイルス・デイヴィス・トリビュート・コンサートVol.2
ウォール・トゥ・ウォール・マイルス・デイヴィス・トリビュート・コンサートVol.2

マイルス空前トリビュート大会第2弾
Wall To Wall Miles Davis Tribute Concert Vol.2 (Cool Jazz)

 今回ご紹介するトリビュート・ライヴ盤は、2001年3月、ニューヨークのシンフォニー・ホールで行なわれたイヴェントの一部を2枚組にまとめたもの。そう、以前ご紹介した第1弾の続編になります。なにしろイヴェントは約10時間にわたって行なわれ、したがって複数のCD発売が予想されますが、果たして第何弾までいくのでしょうか。推察するに第5弾まででしょうか(?)。

 まず最初にクレジット・ミスの指摘から。第1弾もそうでしたが、このシリーズには、初歩的なクレジット・ミスが多いようです。今回は《フリーダム・ジャズ・ダンス》が《ESP》に、《エムトゥーメ》が《ジェミニ》になっています。再版から正確な曲名に直していただきたいと、強く思うマイルス者ではあります。

 今回のベストは、その希少性も加味して、バーント・シュガー&アーケストラ・チェンバーでしょうか。この集団が演奏する《エムトゥーメ》は、しかしハチャメチャにならず、オリジナル・ヴァージョンを順守したアレンジになっています。ある意味では「整理されずぎ」の感もなくはないのですが、こういう「計算されたやかましさ」にも捨てがたい魅力があります。

 次いで注目は、後半(2枚目)に集中して収録されている、マリア・シュナイダー・オーケストラの演奏でしょう。ギル・エヴァンスに師事していたことを思えば、マイルス&ギル時代のトリビュートは、この人が最もふさわしいかもしれません。しかもトランペットのソロ・パートは、ウォレス・ルーニーとマイルス・エヴァンス(ギルの息子)という、この種の企画にありがちの「喜んでいいのか困っていいのかよくわからない微妙さ」が最高の取り合わせとなっています。まあ無難な再現ということでいいのではないかと思います。無駄な虚飾もなく、じつに音楽的な再現であり、いかにも女性らしい細やかなトリビュートといっていいでしょう。

 しかし思うのですが、究極のトリビュート・バンドとは、このウォレス・ルーニーとマイルス・エヴァンスに、甥っ子ヴィンス・ウィルバーンと実子エリン・デイヴィスが加わった、「どの程度ダメなのかがよくわからない血縁バンド」かもしれません。で、マーカス・ミラーがスカスカのプロデュースなんかしたりして。悪い冗談が本当に実現してしまうのが現代です。忘れましょう。それではまた来週。

【収録曲一覧】
1 It Could Happen To You (Terell Strafford)
2 Freedom Jazz Dance (Bobby Watson & Horizon)
3 Mtume (Burnt Sugar/The Arkestra Chamber)
4 Time After Time (Russell Gunn)
5 He Loved Him Madly (Frank London)
6 Oleo (Joe Lovano)
7 Paraphernaria (Sex Mob)
8 In A Silent Way (Don Byron)
9 Concierto De Aranjuez (Maria Schneider Orchestra)
10 The Pan Piper (")
11 Saeta (")
12 Solea (")
13 The Street (John Patitucci)
14 Homage (Wallace Roney)
(2 cd)

2001/3/23 (NY)